2023.01.06
肛門腺はお尻の穴の横、やや斜め下にある脂状の液を出す臭腺の一つで、アポクリン腺と呼ばれます。肛門から見て四時と八時の方向にあります。犬や猫の肛門腺は袋状の構造をしており、肛門嚢とも呼ばれます。そこに分泌液が溜まっていき、強いニオイを放ちます。
人にも肛門腺はありますが、袋状になっていないため溜まることはありません。またアポクリン腺は、人だと脇・耳の中・乳房・肛門・外陰部のあたりある汗を出す腺(汗腺)がそれにあたります。(ただし人の汗腺は2種類あり、体にまんべんなくあるのはエクリン腺と呼ばれるものです)
犬や猫に肛門嚢がある理由は、マーキングのためと考えられています。犬と犬が散歩中に出会うとお尻のニオイを嗅ぎ合うあいさつをしますが、これは実は肛門腺の方を嗅いでいて、それぞれのアイデンティティを確認する行動です。つまり肛門腺からのニオイはコミュニケーションのツールであり、それぞれの存在を示すのに大切な役割を果たしています。
肛門嚢に溜まった液はうんちと一緒に出る場合もありますが、定期的に絞る必要がある子もいます。
肛門腺からの液がなんらかの理由で逃げ場を失い、どんどん袋に溜まっていってしまうと、違和感や痛みの原因に、時には肛門嚢が破裂してしまうことがあります。
肛門腺の病気
・肛門腺の炎症
「お尻を地面にこすりつける」とお話される飼い主様が多いのですが、肛門腺の中にバイ菌が入り込んで繁殖し、炎症を起こすと痒みや違和感につながるようです。肛門腺の中身を絞り、薬で治療することで落ち着く場合が多いですが、感染している菌の種類を調べる検査が必要な場合もあります。
・肛門腺破裂
肛門嚢がぱんぱんに膨らんでしまうと、なにかのきっかけで破裂してしまうことがあります。肛門の横に大きく裂けた穴ができるのでびっくりされる方もいます。治療にかかる時間は長いですが、痛みは痛み止めで対処し、定期的に傷の中を洗うことで、だんだんと治っていきます。
・肛門嚢アポクリン腺癌
犬猫が高齢になり病気をしやすくなると、どこかしらにガン(腫瘍)ができることがあります。肛門嚢アポクリン腺癌は数ある腫瘍の中のひとつで、肛門腺から発生する悪性腫瘍です。外から触ると硬い感触とぼこぼこした感じがあります。症状としてはお尻を地面にこすりつける、元気食欲がない、うんちが出にくい・細いなどがあります。転移率が高いため、見つけたら早めの治療が必要となります。治療としては、手術で腫瘍を取り除く、抗がん剤を使う、放射線治療を行うなどがあります。
まとめ
肛門腺を定期的にお手入れする理由は予防医療の側面もあり、上にあげたような病気のリスクを避ける意味もあります。肛門腺の病気のひとつとして腫瘍を取り上げましたが、腫瘍は偶然のものであり、肛門腺を絞ったら起こらないというわけではありません。ですが、肛門腺を定期的にチェックすることで、腫瘍の早期発見につながることはあります。
浦安、行徳近辺で肛門腺について詳しくお聞きになりたい場合は、お気軽に行徳どうぶつ病院グループまでお尋ねくださいませ。
行徳どうぶつ病院
獣医師
大山 美雪