日本獣医皮膚科学会認定医、春日陽一郎獣医師による皮膚科外来では、わんちゃんねこちゃんの「痒み」に丁寧に寄り添います。院内に病理検査を行うラボも併設しており、皮膚生検まで含めた高度な獣医皮膚科診療をご利用いただけます。
担当の春日陽一郎先生については下記のボタンよりページをご覧ください。
痒みは「引っ掻きたくなるような不快な感覚」と定義されており、痒みを感じると皮膚を引っ掻きたくなります。これは、皮膚に付いた痒みを引き起こす異物を取り除こうとする、体を守る防御反応のひとつと考えられています。
痒みを引き起こす原因は、細菌感染や真菌感染などの感染症、アトピー性皮膚炎や食物有害反応(食物アレルギー)などの皮膚炎、脂漏症や多汗症などの先天的な要因、そしてストレスなどの精神的要因が考えられます。
問診、皮膚の検査、血液検査、除去食試験などを実施し、原因が判明しない場合には皮膚生検を実施する場合もあります。
治療前
治療後
毛が抜けていることを「脱毛」と言い、発毛が疎または完全に欠落している状態のことを指します。
先天性で遺伝的な場合や、後天的に疾患によって生じる場合があります。
先天性脱毛症として、淡色被毛脱毛症やパターン脱毛と呼ばれる疾患があります。
後天性の脱毛症として、舐めたり引っ掻いたりすることで脱毛が生じる場合や、感染症や免疫の異常によって生じる場合、そして毛の成長(毛周期)に異常を生じる場合があります。
脱毛の原因を探るために皮膚科検査(抜毛検査など)によって、毛幹にダメージがあるのか、毛包にダメージがあるのか、または毛周期に異常があるのかを判断していきます。
治療前
治療後
フケのことを「鱗屑」と呼び、その正体は表皮角層が剥がれたものです。表皮の細胞増殖が顕著な場合や、角層の固着力が増強した場合、水疱や膿疱が先行した場合に生じます。
ノミやニキビダニなどの寄生虫、細菌や真菌などの感染症、代謝や内分泌の異常に伴う場合や、脂腺炎や魚鱗癬と呼ばれるような原発性角化症と呼ばれる病気のグループも存在します。
フケが出ている原因を探るため、皮膚科検査によって感染症や寄生虫の有無を調べます。また、原発性角化症の診断には皮膚生検を行います。
治療前
治療後
「できもの」、「こぶ」、「はれもの」を総称して腫瘤(しゅりゅう)と呼びます。原因として、炎症による場合(肉芽腫性炎症)や、腫瘍による場合が考えられます。腫瘍の場合にはさらに良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。
血液検査や画像検査(レントゲン検査や超音波検査)で全身状態を確認し、腫瘤に針を刺す針生検を実施してその原因を推定し、必要があれば手術により切除を行い病理組織診断で確定診断を行います。
治療前
治療後
皆さんはどのような理由で動物病院へ来院したことがありますか?
動物病院へは「ワクチン接種」、「健康診断」といった病気でない場合にも行くこともありますが、多くは「急に吐いた」、「3日前から下痢で様子をみたけど治らない」といった病気の治療を目的に来院されると思います。若いうちは予防や健康診断などの病気以外の理由が多く、歳をとるにつれて徐々に病気が原因で動物病院へ来院する頻度が増えてくる傾向があります。
ヒトと違い犬や猫の健康に関するデータを収集することは難しく、正確に犬や猫にどのような病気が多いかを知ることは難しいのですが、ペット向け保険会社であるアニコム損保株式会社の「家庭どうぶつ白書 2023」を元に分析してみたいと思います。
犬669,661頭(0~12歳)、猫202,191頭(0~12歳)を対象に行なったこの調査では、犬の動物病院への来院理由は、1位:消化器疾患、2位:皮膚疾患、3位:耳の疾患、4位:筋骨角疾患、5位:眼の疾患であり(図1)、猫の動物病院への来院理由は、1位:消化器疾患、2位:泌尿器疾患、3位:皮膚疾患、4位:全身性の疾患、5位:眼の疾患という順番でした(図2)。この結果は、アニコム損保の保険会社に加入している犬や猫に限定されている点であることに注意は必要ですが、これだけ大規模に調査を行なっているデータは他にないので貴重なデータであります。
図1. 犬の動物病院への来院理由。アニコム損保株式会社の「家庭どうぶつ白書 2023」を元に筆者がグラフを作成。犬669,661頭(0~12歳)を対象とした調査結果。
図2. 猫の動物病院への来院理由。アニコム損保株式会社の「家庭どうぶつ白書 2023」を元に筆者がグラフを作成。猫202,191頭(0~12歳)を対象とした調査結果。
犬猫共に、嘔吐や下痢といった消化器疾患が1位となっています。そして皮膚病は、犬では2位・猫では3位と消化器疾患に次いで日常的にみられる病気であるということができると思います。皮膚病は、短期間に改善する場合もあれば、アトピー性皮膚炎のように根治することが難しく長期間付き合っていく病気もあります。また、皮膚リンパ腫のような命に関わる病気もあり、早期発見が必要となる場合もあります。
そのような背景から、なかなか治らない皮膚病で悩まれている飼い主様は多いです。愛犬・愛猫の「痒み」、「毛が抜ける」、「フケがでる」、「できものができている」といった皮膚のお悩みがあれば、是非お気軽にご相談ください。
参考文献
アニコム損保株式会社. “アニコム家庭動物白書 2023”.
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202312.pdf, (2024-12-14)