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猫が背中を掻く理由と病気のサイン|千葉・行徳の獣医師が解説

2025.12.05

愛猫が後ろ足で背中をしきりに掻いている姿、見かけたことはありませんか?

ブラッシングのときや抱っこしたとき、ふと背中を見ると皮膚が赤くなっていた、毛が薄くなっていた…そんな経験をお持ちの飼い主様も多いのではないでしょうか。

猫が体を掻くのは自然な行動ですが、同じ場所を何度も掻き続けたり、掻き傷ができていたりする場合は、皮膚に何らかのトラブルが起きているサインです。

この記事では、猫が背中を掻く原因となる病気や、飼い主様が気づくべき症状、そして動物病院を受診する目安について、詳しく解説します。

なお、当院では日本獣医皮膚科学会認定医 春日陽一郎先生の専門外来を設けており、皮膚トラブルでお困りの飼い主様をサポートしています。

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掻く?舐める?咬む?行動の違いで分かること

猫は痒いときに後ろ足で掻くだけでなく、しきりにその部分を舐めたり咬んだりすることがあります。

ただし、かゆみ以外の理由でも皮膚に気になる刺激があって行うことがありますし、傷口を治そうとしている場合もあります(1)。

痛みとかゆみの見分け方

痛みが原因の場合は、舐める行動が痛みのある部位に集中します。一方、かゆみの病気の場合は舐める範囲がより広範囲になります(1)。

また、肛門の周りを舐め続けるときには、泌尿器や直腸などの異常も考えられます。

舐めたり咬んだりするときには、掻いているときと同様に、まずは皮膚に異常がないかを確認してください。皮膚に異常がない場合は、ストレスや神経系の病気も疑われます。

いずれにしても、愛猫の様子がいつもと違うと感じたら、自己判断せずに動物病院を受診しましょう。


背中の痒みを起こす主な病気

猫が背中を頻繁に掻く原因はさまざまです。ここでは代表的な病気を詳しく解説します。

1. ノミアレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミに刺されたときの唾液に対するアレルギー反応によって起こる皮膚病です(2, 3)。

猫の皮膚疾患の中で最も多い原因の一つで、掻痒のある猫の29%がノミアレルギー性皮膚炎と診断されたという報告もあります(4)。

たった数匹でも強い症状が出ます

「家の中で飼っているから大丈夫」と思っていませんか?

実は、たった数匹のノミに刺されただけでも強い反応が出ることがあります。そのため、ノミが見つからなくても、ノミアレルギー性皮膚炎の可能性は十分にあるのです(2, 3)。

なぜ背中に症状が出やすいのか

ノミアレルギー性皮膚炎では、背中、首の後ろ、尾の付け根、腰部に症状が出やすいです(2, 3, 5)。

猫はグルーミング(毛づくろい)をする動物ですが、ノミは猫が舐めにくい場所を好んで寄生します。そのため、首の後ろや尾の付け根に集まりやすく、これらの部位にかゆみが強く出るのです(3)。

こんな症状に注意

  • 小さなプツプツとした隆起と痂皮(かさぶた)が背中や首に多数できる(2, 3, 5)
  • 引っ掻く、舐める、咬むなどの行動が頻繁に見られる(2)
  • 過剰なグルーミングによって背中の毛が薄くなる(2)
  • 引っ掻きによる傷から細菌が入り込み、化膿することがある(3)

季節による変化

温暖な地域では一年中発生しますが、秋や暖かい季節に悪化することが多いとされています(5, 6)。

千葉県行徳エリアは比較的温暖で、ノミの活動期間が長い地域です。室内飼いでも油断は禁物です。

2. 猫アトピー性皮膚炎

ハウスダストマイト(ダニ)、花粉、カビなどの環境中のアレルゲン(アレルギーの原因物質)に対する過敏反応によって起こる皮膚病です(7, 8)。

いつ発症するの?

通常は1〜5歳で発症しますが、生後6ヶ月から14歳まで幅広い年齢で発症する可能性があります(7, 9)。

ハウスダストマイトアレルギーが最も多いため、約75%の猫で通年性の症状が見られます(9)。花粉アレルギーの場合は季節性の悪化が見られることもあります。

こんな症状に注意

  • 発疹や痂皮(かさぶた)が背中以外の場所にも多数できる
  • 脱毛を併発する
  • 顔や耳の周りにも症状が出ることがある

3. 食物アレルギー

食物アレルギーは、特定の食べ物に含まれるタンパク質に対する免疫反応です。

環境アレルギーと臨床症状が非常に似ているため、区別するには8週間以上の除去食試験(特定の食事のみを与える試験)が必要です(7, 10)。

通年性のかゆみがあり、消化器症状(嘔吐、下痢)を伴うこともあります(10)。

4. ストレスによる過剰グルーミング(心因性脱毛症)

心因性脱毛症は、心理的なストレスが原因で過剰にグルーミングをしてしまう行動の問題です(11, 12)。

猫はストレスを感じたときにグルーミングをすることで気持ちを落ち着かせようとしますが、それが過剰になると脱毛や皮膚のダメージにつながります(11)。

ただし、「ストレスが原因」と決めつける前に、必ず医学的な原因を除外する必要があります(12, 13)。

どんな猫に多い?

  • 多頭飼育の家庭(11, 12)
  • 完全室内飼いの猫(11)
  • 神経質な性格の猫

ストレスの原因になりやすいこと

  • 同居猫との関係
  • 引っ越しや家族構成の変化(11)
  • 飼い主様の生活リズムの変化

こんな症状に注意

  • 腹部、大腿内側、鼠径部(そけいぶ:後ろ足の付け根)、腰背部などに左右対称に脱毛が見られる(11, 12)
  • 皮膚の赤みや腫れがほとんどない(11)

こんな症状があればすぐに動物病院へ

以下の症状がある場合は、躊躇せず今すぐ当院を受診してください

  • かゆみで食事や睡眠が妨げられている
  • 掻き傷から出血したり膿が出ている
  • 脱毛の範囲が急速に広がっている
  • 元気や食欲がない
  • 皮膚が赤く腫れている、または熱をもっている

皮膚トラブルは放っておくと悪化し、治療期間が長引きます。「様子を見よう」と思っている間に、愛猫は苦しんでいるかもしれません。

当院では、LINEから24時間予約を受け付けています。少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

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掻き傷の二次感染に要注意

掻き傷から細菌が入り込むと、膿皮症という細菌感染症を起こします(14, 15)。

猫の膿皮症は犬ほど多くはありませんが、アレルギー性皮膚疾患や寄生虫疾患に続発することが知られています(14, 15)。

二次感染を防ぐために

エリザベスカラーの使用
掻き壊しを防ぐため、カラーや術後服を使用しましょう。

爪を短く保つ
定期的な爪切りで、掻いたときのダメージを最小限にしましょう。

早めの受診
症状が軽いうちに治療を始めることが、愛猫の負担を減らし、治療期間を短くする最善の方法です。

二次感染を起こすと、治療が複雑になり、愛猫もつらい思いをします。「もう少し様子を見てから…」ではなく、気づいた時点で当院を受診してください

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日常でできる予防とケア

動物病院での治療と並行して、日常生活でできるケアも大切です。

ノミ・ダニ予防

一年を通じて予防薬を使用しましょう。完全室内飼いでも予防は必要です。

ノミは人間の衣服や靴について室内に入り込みます。「うちの子は外に出ないから大丈夫」は通用しません。

ストレスの軽減

  • 安心できる隠れ場所の提供
  • 規則正しい生活リズム
  • 適度な遊びの時間を確保

これらがストレス軽減につながります。

環境の清潔さを保つ

定期的な掃除で、ハウスダストマイトやアレルゲンを減らしましょう。特に、猫が長時間過ごす場所は念入りに。

適切な食事

獣医師に相談しながら、愛猫に合った食事を選び、健康な体づくりをしましょう。

ただし、予防ケアをしていても皮膚トラブルが起きることはあります。大切なのは、異変に早く気づき、早く対処することです。


よくある質問

Q1. 室内飼いなのにノミアレルギーになることはありますか?

**A. あります。**完全室内飼いでも、ノミは人間の衣服や靴について室内に侵入します。また、たった数匹のノミでも強いアレルギー反応を起こすことがあるため、室内飼いでも一年中予防薬を使用することが推奨されます。

Q2. 背中を掻いているだけで病院に行くべきですか?

**A. はい、受診をおすすめします。**猫は痛みやかゆみを我慢する動物です。掻いている行動が見られる時点で、すでに相当な不快感を感じている可能性があります。早期発見・早期治療が、愛猫の苦痛を最小限にします。

Q3. 掻き傷に市販の薬を塗ってもいいですか?

**A. 自己判断での使用は避けてください。**人間用の薬やどうぶつ用でも不適切な薬を使用すると、症状を悪化させたり、猫が舐めて中毒を起こす危険性があります。必ず動物病院で診断を受け、適切な治療を受けましょう。

Q4. ストレスが原因かもしれないと思ったら?

**A. まず動物病院で医学的な原因を除外してください。**心因性脱毛症の診断は、他の病気の可能性をすべて除外してから行います。自己判断で「ストレスだろう」と決めつけると、重要な病気を見逃す危険性があります。

Q5. 千葉県行徳エリアで皮膚科に詳しい病院はありますか?

**A. 当院では日本獣医皮膚科学会認定医 春日陽一郎先生の専門外来を設けています。**皮膚トラブルでお困りの場合は、ぜひご相談ください。LINEから簡単に予約できます。


まとめ

猫が背中を頻繁に掻くのは、ノミアレルギー性皮膚炎、環境アレルギー、食物アレルギー、ストレスなど、さまざまな原因が考えられます。

**最も重要なのは、早めに動物病院を受診して原因を特定することです。**特に、掻き傷から二次感染を起こすと治療が長引き、愛猫の負担も大きくなります。

「このくらい大丈夫かな」「もう少し様子を見てから」と思っている間に、症状は悪化していくかもしれません。

愛猫の快適な生活を守るために、少しでも気になることがあれば、今すぐ動物病院にご相談ください。

当院では、LINEから24時間いつでも予約を受け付けています。皮膚トラブルでお困りの飼い主様、どうぞお気軽にご連絡ください。

[今すぐLINEで予約する]→ https://page.line.me/853jhqlz?openQrModal=true


監修:行徳どうぶつ病院
院長 名古孟大

※当院では、日本獣医皮膚科学会認定医 春日陽一郎先生の専門外来を設けています。


参考文献

  1. Miller WH Jr. Cornell University College of Veterinary Medicine. Cats that Lick Too Much. Available at: https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/cornell-feline-health-center/health-information/feline-health-topics/cats-lick-too-much
  2. Merck Veterinary Manual. Flea Allergy Dermatitis in Dogs and Cats. September 2024.
  3. Cornell University College of Veterinary Medicine. Flea Allergy. Available at: https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/cornell-feline-health-center/health-information/feline-health-topics/flea-allergy
  4. Hobi S, Linek M, Marignac G, et al. Clinical characteristics and causes of pruritus in cats: a multicentre study on feline hypersensitivity-associated dermatoses. Vet Dermatol. 2011;22(4):406-413.
  5. Noli C, Foster A, Rosenkrantz W. Flea Bite Allergy. In: Veterinary Allergy. West Sussex, UK: John Wiley & Sons, Ltd; 2014.
  6. Today’s Veterinary Nurse. Flea Allergy Dermatitis: What Your Clients Need to Know. February 2022.
  7. Diesel A. Atopic dermatitis in cats. Can Vet J. 2017;58(3):299-303.
  8. Favrot C. Feline non-flea induced hypersensitivity dermatitis: clinical features, diagnosis and treatment. J Feline Med Surg. 2013;15(9):778-784.
  9. Jeromin A. Does my cat have environmental allergies (atopy, now called feline atopic skin syndrome-FASS)? Veterinary Allergy & Dermatology, Inc. October 2022.
  10. Today’s Veterinary Practice. Feline Atopic Skin Syndrome. March 2022.
  11. Waisglass SE, Landsberg GM, Yager JA, Hall JA. Underlying medical conditions in cats with presumptive psychogenic alopecia. J Am Vet Med Assoc. 2006;228(11):1705-1709.
  12. Royal Canin Veterinary Academy. Overgrooming in Cats – Diagnosis and Treatment. Available at: https://academy.royalcanin.com/en/veterinary/overgrooming-in-cats
  13. Today’s Veterinary Practice. A Clinical Approach to Alopecia in Cats. June 2022.
  14. Merck Veterinary Manual. Pyoderma in Dogs and Cats. May 2025.
  15. White SD. Feline pyoderma therapy. Clin Tech Small Anim Pract. 2006;21(3):135-139.