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やけどさせない保温の仕方

2026.01.06

我が家には2匹の猫がいます。子猫のとき、以前の勤め先の玄関に捨てられていたところを保護しました(ひどい人がいるもんですね)。

猫を飼っていて目を見張るのは、暖かい場所に対する貪欲さです。部屋が極寒というわけではなくても、少しでも暖かい場所を探し出してそこにいる。エアコンの風がちょうどあたるテーブルの上とか、お風呂上がりでぬくぬくしている人間の腹の上とか。その嗅覚を、布団の下の人間の身体を避けて着地することにも発揮して欲しいと願ってやみません。

リクガメを爬虫類専用ケージで飼っていたとき、そのケージの上がリクガメの保温器具から伝わる熱で暖かいと気づいた猫たちは、冬のあいだじゅうケージの上を寝床にして、体重でケージの網蓋をぶち抜いたことがあります。網蓋だけ別売りしてはいるものの安くはないし、その辺のスーパーに売っているものでもないので難儀しました。

リクガメケージの上で暖をとる猫

メーカー各社には、「猫が乗っても大丈夫」なケージの開発をお願いする所存です。「ケージに乗れなくなった、どうしてくれる」と猫に文句を言われてしまうので。

それでもケージをぶち抜くくらいならまあよい。この貪欲さがもっと大きな事故につながることもあります。ある冷え込む夜、冷え性の私は、足元にセラミックヒーターをつけてベッドに寝転がっていました。すると、足元から何かが焦げるようなにおいがただよってきました。燃えるようなものは置いていなかったはずなのにと訝しみながらヒーターの方を見ると、ヒーターに密着して暖をとる猫の姿が。慌てて引き離すと、ヒーターに触れていたほうの被毛がチリチリに焦げていました。幸い皮膚に異常はありませんでしたが、それ以来うちではエアコン以外の暖房器具を使わなくなりました。

暖房器具を多用する冬は、このような事故が起こりやすい季節です。トカゲがバスキングスポットで火傷した、なんて話もたいていは冬ですね。私は子どもの頃、実家で飼っていたグリーンイグアナが石油ストーブにダイブするところをキャッチしたことがあります。

こういった事故を予防するためには、いったいどうしたらいいのでしょうか。1日中ストーブの前に張り付いて、飛び落ちてくるイグアナをキャッチするわけにもいきません(まあ、そんな仕事があったら最高ですけどね。なあホールデン1)。

まあ、これ、答えはほぼ一択です。さっきちらっと言ってしまいましたが、エアコンを使うこと。ほぼ、と言ったのは、お金持ちならば全館空調を取り入れるという上位互換の選択肢があるためですが(読んでますか社長)、まあ要するに、「空気の対流を活用する」ということですね。

熱の伝わり方には、伝導、輻射、対流の3つがあります。

伝導とは、直接触れているものに熱が伝わること。カイロや電気あんかのように「触ると温かい」ものは伝導により熱を伝えています。

輻射とは赤外線を放射により熱が伝わること。石油ストーブやハロゲンヒーターのように「手をかざすと温かい」ものは輻射によって熱を伝えています。

対流とは、温められた流体の移動によって熱が伝わること。お風呂につかりながら追い炊きすると、熱いお湯がぬぬーっと湯舟の中をめぐっていくのを感じると思います。あれが対流。温風に直接当たらなくても部屋が温まるエアコンは、対流によって熱を伝えています。

3つの熱の伝わり方のうち、火傷につながるのは伝導と輻射です。屋内の暖房による対流が火傷につながることは基本的にありません。

だから、保温器具としてエアコンを使えば、どうぶつが熱源に触れてしまって火傷する事故はなくせるわけです。

しかし、エアコンの効果はこれだけではありません。エアコンは、自身がどうぶつを火傷させることがないだけでなく、併用しているほかの暖房器具による火傷のリスクも下げることができます。

伝導や輻射によって熱を伝える暖房器具は、それに触れているか、その近くにいないと温まることができません。冬の全校集会を思い出してください。でっかい赤外線ヒーターの正面は暖かかったですが、背面や離れた場所は泣くほど寒かったですよね。そしてヒーターの正面に人が集まりがちでしたよね。教室でも、休み時間はストーブの周りに集まってましたよね。冬の学校、ほんとうに寒い(積年の恨み)。同じように、寒い部屋で主に伝導や輻射によって温める器具だけを使うと、どうぶつたちも熱源のそばに集まってきてしまい、ずっとそこに留まってしまいます。これが、低温やけどの根本的な原因です。

一方、エアコンを使えば、部屋全体を快適な温度に保つことができます。エアコンで快適な温度に保たれた室内では、どうぶつが、寒さを凌ぐためにいつまでも赤外線ヒーターの前やホットカーペットの上にうずくまっている必要がありません(逆に暑くて逃げて行った入りする)。だから、エアコンをつけておくことで、ホットカーペットなどを使っていたとしてもそれらと接している時間が減少し、低温火傷のリスクが下がるのです。

この効果は、とくに爬虫類の火傷の防止に寄与します。

昼行性の爬虫類を飼育する際には、爬虫類が体を温められるように、レフ電球などを使ってどうぶつの体表温度が35〜40℃になるくらいの場所(バスキングスポットと呼びます)を用意します。朝、起きてきた爬虫類は、まずこの場所で体を温めます。このとき、部屋が寒いと、体がなかなか温まらず、いつまでもバスキングスポットに止まり続けてしまいます。すると、皮膚だけが輻射による熱を浴びすぎて低温火傷を起こしてしまいます。爬虫類の火傷について、「バスキング用のランプが近すぎる、大きすぎるせいだ」と言われることがありますが、実際は逆(暑すぎれば近づかないだけなので)。バスキングしているのにぜんぜん体が温まらないから、半端な熱を浴び続けて火傷をしてしまうんです。エアコンを使ってケージを置いている部屋自体をあたたかくしてあげれば、このような火傷の発生リスクを抑えることができます。

このように、エアコンには、二重の火傷防止効果があるのです。

冬場、保温器具による火傷を防止するためには、エアコンのフル活用をお勧めします。

我が家では、リクガメのケージにエアコンの風が直接当たらないように風向きを調節した結果、リビングテーブルに座る私の顔にすべての風がぶち当たるようになって顔面がアタカマ砂漠みたいになっていますが、どうぶつのQOLには代えられません。

みなさんも一緒に、唇ひび割れてくれると助かります(呪い)。よろしくお願いいたします。

  1. ホールデン・コールフィールド。J.D.サリンジャーの小説『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の主人公。成績不振で学校を退学になり家にも帰らず街を放浪した挙句、妹に「僕がやりたいのはライ麦畑で子どもたちが崖から落ちないように捕まえる仕事なんだ」などとのたまう。 ↩︎