2025.12.26
院長ブログ
当院のブログは、私自身が執筆している院長ブログを除いて、記事の作成に生成AIを使用しています。動物病院のブログとしてはわりと驚異的なスピードで更新されているのは、生成AIに仕事を押し付けているからです。診療に力を使い果たしたあとの頭で、あんなにたくさんの文章を書くことはできません。◯ッドブルに翼を授かればできるでしょうが、あの翼は天国へ行くためのものらしいので1、使わないほうがよいでしょう。別のスタッフが生成AIに作らせた記事を、私はチェックしているだけ。だから、「監修」というクレジットになっているわけですね。
とはいえ、生成AIか作ったものを監修するだけでも、それなりの手間にはなります。なにしろ素の生成AIは、日本語からして怪しい。
たとえば、文章中に箇条書きを入れるとき、和文では次のように書きます。
ポケモンのパラメータに影響を及ぼす要素には、次の3つがあります。
箇条書きに入る前の文は、句点で締められていますね。
ところが、これを生成AIに書かせようとすると、コロンで締めてくるのです。こんなふうに。
ポケモンのパラメータに影響を及ぼす要素には、次の3つがあります:
これは英文の慣習であり、和文としては不自然です。英語ベースで開発されたものだから、そういうことになるのでしょう。
だから、箇条書きのある和文を生成AIに書かせたときには、あとから人間がコロンを句点に直さなければいけないし、次からは句点を使うように生成AIに指示しなければいけません。
このように、生成AIに文章を書かせるためには、まず自然な日本語を生成AIに教え込んでいく必要があるのです。そこからやらなくてはいけないので、思ったほど楽ではなかったりするんですよね。
重要なのは、自然な日本語に直したり、生成AIに自然な日本語を教えるためには、自身が自然な日本語を知っていなければいけないということです。自然な日本語を知らなければ、生成AIが作った文章が自然なのかどうかわかりません。日本語に不慣れなノンネイティブの方が上の例を見ても、「そういうものか」としか思わないでしょう。
これが、生成AIの困ったところです。
現状の生成AIの能力では、まだいろんなことを間違えてしまいます。使用者がその間違いをチェックしなければいけません。だから、「自分がすでに正解を知っていること」でなければ、仕事を任せることができないんです。
もし、みなさんの中に、動物の飼い方、健康管理について調べるために生成AI(GeminiとかChatGPTとか)を使ってみたいという方がいらっしゃったら、この生成AIの限界に、十分注意してください。生成AIに「知識そのもの」を教えてもらおうとすると、間違った知識を得てしまうおそれがあります。
園芸の世界には、「コピペ園芸」という言葉があります。どこの誰が言い出したかわからない植物の育て方が、検証されないまま多くのウェブサイトに転載されもっともらしく紹介されている、どこのウェブサイトを開いてもコピペしたように同じことが書いてあることを揶揄する言葉です。コピペでも正しければいいのですが、しばしば間違っているのが困りもの。
「コピペ園芸」的なものは、動物飼育の世界にも溢れています。「リクガメには温浴が必要」なんてその最たるものでしょう。あれは、アニマル・ウェルフェアみたいな概念が普及する前、生息地から何週間も飲まず食わずで箱詰めにされて日本までやって来て脱水しているカメに、とりあえず水を飲ませるための手段として生まれました2。ルーティーンでやるものではありません。食べ物から必要な水分を摂取していてほとんど水を飲まないタイプの種・個体では、温浴で水は飲まないのに、温浴の刺激でまだ水分を吸収しきっていない便を出してしまい、かえって水分が足りなくなるということも起こりえます。けれど、「リクガメには温浴をさせて」という記事がネットには溢れています。
訓練の不十分な生成AIは、あるいは不適切な指示を受けた生成AIは、こういうものに踊らされて、間違った答えを返してくることがあります。でも、正解を知らないから生成AIに尋ねている利用者は、AIが間違いを教えていることに気づけません。生成AIの利用は、現状ではまだまだリスクを伴います(AIを悪用したフェイクが増えてくると、よりリスキーになる恐れもあります)。
自分の知らない知識を得るために生成AIを活用するとしたら、方法はひとつだけだと思います。「この分野について学ぶために読むべき文献はなんですか」と尋ねること。そして、生成AIが挙げてきた文献を自分で全部読み、内容の確からしさを吟味すること。「どんな本があるのか探してみる」という、勉強をする前でも「自分にできる」作業だけを生成AIにやらせるのです。これなら、生成AIを使わない場合に比べて、間違えるリスクが増えることはなくなるでしょう。書籍の信頼性を判断する方法は、以前の記事でお話ししましたね。
生成AIは、「自分でできるんだけどめんどくさいこと、時間が割けないこと」を代行してもらう道具だと私は考えています。自分にできないこと、知らないことを任せてはいけない。
便利なものではありますが、使い方には十分注意してくださいね。