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犬の内股に湿疹ができる原因と対処法

2025.12.29

愛犬を抱っこしたときやシャンプー後、「あれ?内股が赤くなってる…」と気づいて心配になったことはありませんか?

内股の湿疹は、放っておくとどんどん悪化して、愛犬が痒がったり、皮膚が黒ずんだりする可能性があります。

内股の赤みや湿疹に気づいたら、まずは専門的な診察を受けることをおすすめします。

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なぜ内股は湿疹ができやすいのか

内股は、犬の体の中でも皮膚トラブルが起きやすい場所のひとつです。

内股に湿疹ができやすい理由

1. 皮膚同士が擦れ合う(摩擦) 

内股は、歩くときに皮膚同士がこすれやすい場所です。皮膚が擦れると、目に見えない小さな傷ができます。この傷から細菌が入り込むと、炎症や湿疹の原因になります。

2. 湿気がこもりやすい 

内股は、汗や皮脂などの水分が蒸発しにくい環境です。湿気で皮膚がふやけた状態(浸軟)になると、さらに傷つきやすくなります。

3. 温度が高い 

皮膚のヒダ部分は他の部位よりも表面温度が高くなる傾向があり、湿気と組み合わさることで皮膚がふやけやすくなります(2)。

4. 空気が通らない 

内股の皮膚のヒダの間は空気の流れが悪く、熱と湿気が逃げません。これが皮膚トラブルを悪化させます。

5. 細菌やカビが増えやすい 

温かくて湿った環境は、細菌や真菌(カビ)にとって最高の繁殖場所です(1)。健康な皮膚にいる常在菌が異常に増えて、炎症を引き起こします。

特に梅雨から夏にかけての高温多湿な時期には、細菌やカビが増えやすくなります。

湿疹ができやすい犬種

ダックスフンドやコーギーなど足の短い犬種、ブルドッグやパグなど皮膚にシワが多い犬種、肥満傾向の犬では、これらの犬は、内股の皮膚の接触面が大きくなるため、より湿疹ができやすいです。

内股の湿疹を引き起こす主な病気

内股の湿疹は、単なる「かぶれ」ではなく、さまざまな皮膚病のサインかもしれません。ここでは代表的な病気を解説します。

1. アトピー性皮膚炎

どんな病気

 皮膚のバリア機能が弱くなり、外部からの刺激に敏感になって、湿疹や痒みが出る病気です(3)。

健康な皮膚は、外からの刺激や細菌から体を守る「バリア」の役割を持っています。しかし、アトピー性皮膚炎の犬ではこのバリアが壊れているため、ハウスダストや花粉など、本来は無害な物質にも体が過敏に反応してしまいます。

なぜ内股にできやすい?

内股、わきの下、お腹、足の付け根などは、犬のアトピー性皮膚炎の症状が出やすい場所です(4)(5)。皮膚が薄く毛が少ないこれらの部位は、外部からの刺激に敏感なためです。

2. 脂漏性皮膚炎

どんな病気?

 皮脂の分泌が過剰になったり、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)が異常に早くなったりする病気です。

通常、犬の皮膚は約3週間で生まれ変わりますが、脂漏症ではこれが1週間程度に短縮されてしまいます。

なぜ内股にできやすい?

内股のような通気性の悪い場所では、過剰な皮脂がこもりやすく、それを栄養源とするマラセチア(カビの一種)が異常に増殖します。これによって炎症が起き、さらに皮膚の状態が悪化するという悪循環に陥ります。

3. 膿皮症(のうひしょう)

どんな病気?

皮膚のバリア機能が壊れることで、皮膚の常在菌(普段から皮膚にいる菌)が皮膚の中に入り込んで起こる感染症です(9)(10)。

なぜ内股にできやすい?

 内股は皮膚同士が擦れ合うため、細かな傷ができやすい場所です。その傷から細菌が入り込んで、膿皮症を起こします。

特に、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎などですでに皮膚が弱っている犬では、膿皮症を併発しやすくなります。

家庭でできる内股湿疹の予防ケア

動物病院での治療と並行して、ご家庭でできるケアも大切です。ただし、すでに湿疹が出ている場合は、自己判断でのケアは避け、必ず獣医師の指示に従ってください。

1. 適正体重を維持する

肥満になると、内股の皮膚の接触面が増えて、湿気もこもりやすくなります。肥満の犬では皮膚のヒダが深くなったり、新たにヒダができたりすることがあります(11)。

適正体重を維持することは、湿疹の予防や悪化防止につながります。

2. 適切なシャンプーとケア

定期的なシャンプーで皮膚を清潔に保つことで、皮脂の蓄積や細菌、マラセチアの増殖を抑えることができます。

シャンプーをする際は、内股を含めて全身をしっかり乾かしましょう(生乾きの状態では細菌やマラセチアが増えやすくなります)。また、内股は皮膚が弱いため、ドライヤーは冷風にするか、皮膚から離して使用してください。

シャンプーをしない日も、 散歩の後や暑い日には、蒸しタオルで内股を優しく拭いてあげるなど、清潔を保つ工夫をしましょう。

3. 環境を整える

室温20〜25℃、湿度40〜60%を目安に、高温多湿を避けます。寝床やタオルは定期的に洗濯し、清潔を保ちましょう。梅雨から夏にかけては特に注意が必要です。

4. 日常的な観察習慣をつける

日頃から、抱っこやブラッシングの際に、内股の皮膚の状態をチェックする習慣をつけましょう。注意すべき変化には次のようなものがあります。

  • 赤み
  • 湿疹
  • 脱毛
  • 嫌なニオイ
  • 犬が気にして舐める・かく

これらの変化に気づいたら、早めに受診してください。


内股の湿疹、こんな時はすぐに受診を

以下のような症状が見られたら、迷わず動物病院を受診してください。

  • 内股が赤くなっている
  • 湿疹やブツブツができている
  • 犬が頻繁に内股を舐めたり、かいたりしている
  • 皮膚から嫌なニオイがする
  • 毛が抜けている
  • 皮膚が黒ずんできた
  • 以前にも同じような症状が出たことがある

早期発見・早期治療が、愛犬の快適な生活を守ります。

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まとめ

犬の内股の湿疹は、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、膿皮症、疥癬など、さまざまな原因で起こります。

内股は摩擦、湿気、高温、換気不良といった複数の要因が重なり、特に皮膚トラブルが起きやすい部位です。

家庭でのケアも大切ですが、すでに症状が出ている場合は、自己判断せずに専門的な診察を受けることが最も重要です。

行徳・市川市で皮膚トラブルにお困りの方は、日本獣医皮膚科学会認定医の春日陽一郎先生による専門外来をぜひご利用ください。適切な診断と治療で、愛犬の快適な生活を取り戻すことができます。

少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

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監修

行徳どうぶつ病院
院長 名古孟大


引用文献

(1) Nobles T, Syed HA, Miller RA. Intertrigo. StatPearls. 2024
(2) Banovic F. Skin Fold Dermatitis (Intertrigo) in Dogs. Today’s Veterinary Practice. 2022
(3) 大嶋有里. アトピー性皮膚炎を極める―犬の臨床現場を中心に―. 獣医臨床皮膚科. 2014;20(1):3-7.
(4) Rostaher A, et al. The diagnostic challenges of canine atopic dermatitis. Vet Focus. 2021;31(2).
(5) Favrot C, et al. Canine atopic dermatitis: detailed guidelines for diagnosis and allergen identification. BMC Vet Res. 2015;11:196.
(6) Marsella R. Atopic Dermatitis in Domestic Animals: What Our Current Understanding Is and How This Applies to Clinical Practice. Vet Sci. 2021;8(7):124.
(7) Jaeger K, et al. Breed and site predispositions of dogs with atopic dermatitis: a comparison of five locations in three continents. Vet Dermatol. 2010;21:118-122.
(8) Thomsen M, et al. A comprehensive analysis of gut and skin microbiota in canine atopic dermatitis in Shiba Inu dogs. Microbiome. 2023;11(1):232.
(9) Banovic F. Skin Fold Dermatitis (Intertrigo) in Dogs. Today’s Veterinary Practice. 2022.
(10) O’Neill DG, et al. Ironing out the wrinkles and folds in the epidemiology of skin fold dermatitis in dog breeds in the UK. Sci Rep. 2022;12:10611.
 (11) Janniger CK, et al. Intertrigo and Secondary Skin Infections. Am Fam Physician. 2005;72(5):833-838.