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【行徳の獣医師が解説】犬の皮膚が黒ずむ原因と治療法|お腹・脇の色素沈着は病気のサイン?

2025.12.19

「愛犬のお腹や脇が黒くなっている…これって病気?」

そんな不安を抱えて、夜中にスマホで検索されている飼い主様も多いのではないでしょうか。

犬の皮膚の黒ずみ(色素沈着)は、単なる老化現象ではなく、体の中で起きている炎症のサインです。放置すると悪化する可能性があるため、早めの受診が大切です。

この記事では、行徳どうぶつ病院の獣医師が、犬の皮膚の黒ずみについて「なぜ黒くなるのか」「どんな病気が隠れているのか」「治療で治るのか」を解説します。

【こんな症状があったらすぐLINE予約】

  • お腹や脇、足の付け根が黒ずんでいる
  • 黒ずんだ部分をしきりに舐めたり掻いたりしている
  • 皮膚がゴワゴワと厚くなっている
  • 脱毛や赤み、ベタつきを伴っている

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犬の皮膚の黒ずみ(色素沈着)とは?

色素沈着とは、犬の皮膚が黒や茶色に変色した状態を指します。よくみられるのは、お腹、脇の下、足の付け根(内股)、四肢、耳の内側です。

皮膚が黒ずむだけでなく、ゴワゴワと厚くなったり、ビロードのような質感に変わったりすることもあります(1)。

色素沈着は「結果」であって「原因」ではない

色素沈着は、何らかの皮膚トラブルが起きた結果として現れる変化です(1)。

色素沈着を見つけたら「なぜ黒くなったのか」を突き止める必要があります。

なぜ色素沈着が起きるのか?

皮膚に炎症や刺激が繰り返し起きると、体は皮膚を守ろうとしてメラニン色素を過剰に作り出します。これが色素沈着の正体です(3)。

人間でいうと、虫刺されの跡が茶色く残ったり、傷跡が黒ずんだりするのと同じ仕組みです。

色素沈着を引き起こす主な原因には、以下のようなものがあります。

  • 慢性的な皮膚の炎症
  • アレルギー反応
  • 執拗な舐め行為や掻き壊し
  • 摩擦や刺激

ほとんどの色素沈着は、原因となっている病気を治療すれば改善する可能性があります(1)(2)(3)。ただし、放置すると悪化したり、元に戻りにくくなったりするため、早めの診断と治療がカギとなります。

色素沈着を引き起こす代表的な皮膚疾患

色素沈着はさまざまな要因で起こりますが、ここでは、比較的よくみられる疾患をご紹介します。

1. 膿皮症(細菌感染)

皮膚のバリア機能が低下すると、普段は無害なブドウ球菌が異常繁殖して皮膚炎を起こします。

膿皮症は二次感染として起きることが多く、背後にアトピーやアレルギーなどの基礎疾患が隠れていることがほとんどです。

2. 犬アトピー性皮膚炎

犬の約10~30%が罹患していると言われています(7)。

皮膚のバリア機能が生まれつき弱いため、ハウスダストや花粉などの環境中の物質に過剰反応し、強いかゆみと炎症を起こします(6)。

完治は難しい病気ですが、適切な治療で症状をコントロールし、快適な生活を送ることは十分可能です。

3. 食物アレルギー

特定の食べ物(牛肉、鶏肉、小麦、大豆など)に対するアレルギー反応で、皮膚炎や下痢などを引き起こします(6)。

4. ノミアレルギー性皮膚炎

ノミの唾液に対するアレルギー反応です。たった1匹のノミでも激しいかゆみを引き起こすことがあります。

5. 脂漏性皮膚炎

皮脂の分泌が多い部位に起きる皮膚炎です。マラセチアという酵母菌(カビの仲間)の異常繁殖が関与しています(4)。

シーズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、バセット・ハウンドなどの犬種で多く見られます(5)。

6. 内分泌疾患

ホルモン分泌の異常によっても、皮膚に色素沈着が起きる場合があります。ホルモン異常だけの場合は、痒みを伴わないことが多いです。

【重要】こんな症状があったらすぐに受診を

以下のような症状がある場合は、自己判断での様子見は危険です。症状が悪化する前に、できるだけ早く当院までご相談ください。

  • ✓ 皮膚を掻きむしっている
  • ✓ 皮膚が赤く腫れている
  • ✓ ベタベタした分泌物や悪臭がある
  • ✓ 脱毛が急速に広がっている
  • ✓ 皮膚がゴワゴワと厚くなっている
  • ✓ じくじくした傷や出血がある
  • ✓ 元気や食欲がない

特にかゆみが強い場合は、掻き壊しによって二次感染を起こし、治療が長引く可能性があります。早期発見・早期治療が、どうぶつの苦痛を最小限に抑えるカギです。

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動物病院での検査内容

当院では、色素沈着の原因を正確に特定するため、以下のような検査を組み合わせて診断します。

1. 問診

問診では、以下のようなことをお尋ねします。

  • いつから症状があるか
  • かゆみはあるか
  • 症状は悪化してきているか
  • 普段何を食べているか
  • ノミ・マダニの予防はしているか
  • 他に気になる症状はないか

2. 身体検査・皮膚検査

身体検査では、皮膚の状態、色、質感や脱毛パターンを観察します。

皮膚検査では、皮膚表面に細菌やマラセチアが増えていないか、被毛の中にカビが侵入していないか、毛根や角質の中に寄生虫が入り込んでいないかといったことを顕微鏡で確認します。検査のために、被毛や角質を採取します。

3. 必要に応じた追加検査

色素沈着は、ホルモン異常や内臓の病気から生じることもあります。そのため、血液検査や超音波検査など、全身を調べる検査をすることがあります。

どうしても原因がわからない場合は、皮膚の一部を切除し、病理検査を行うこともあります。局所麻酔でできる検査ですが、こわがりな子、ストレスを感じやすい子の場合は、全身麻酔で眠っているあいだに切除を行います。

検査はわんちゃんの負担を最小限にしながら、必要なものだけを提案します。気になることがあれば、遠慮なくご質問ください。

📱検査について詳しく相談する


治療方法:原因に合わせたアプローチ

色素沈着の治療は、原因となっている病気を治すことが大前提です。

膿皮症の治療

膿皮症に対しては、抗菌薬配合の薬用シャンプーによるまめな洗浄が基本になります。ただ、色素沈着が起きるほどの炎症がある場合は、皮膚の深部まで感染しているおそれがあるので、抗菌薬の内服も行うことがあります(1)。

治療期間は症状の程度により異なりますが、通常2~4週間程度です。感染がなくなっても、色素沈着がなくなるまでには時間がかかります(ほかの皮膚病が原因の場合も同様です)。

犬アトピー性皮膚炎の治療

完治は難しいため、症状をコントロールしながら長期的に管理します(6)(8)。

色素沈着が起きるほどの炎症であれば、はじめはステロイドを使うことが多いです。局所的な痒みだけであれば塗り薬を、全身に痒みが出ている場合は飲み薬を使います。

強い炎症が落ち着いたあとや、ステロイドの副作用が心配なわんちゃんには、分子標的薬と呼ばれる新しいお薬を使います。こちらは飲み薬しかありません。

そのほか、皮膚を清潔に保つためにシャンプーを、シャンプー後の乾燥を防ぐために保湿剤を使うこともあります。ハウスダストなどの刺激で痒みが出るため、お部屋を清潔に保っていただくことも必要です。

ノミアレルギー性皮膚炎の治療

ノミアレルギー性皮膚炎に対しては、ノミの駆除を行います。同居どうぶつがいる場合にはそのすべてに駆除薬の投与が必要です。また、お部屋を徹底的に掃除して、カーペットなどに落ちているノミの卵、幼虫を排除する必要があります。

かゆみが強い場合は、一時的にステロイドなどのかゆみ止めを使用します。

ノミ予防の継続が再発防止のカギです。

食物アレルギーの治療

食物アレルギーは、アレルゲンを含まない(アレルギーのでない)食事に変更して治療します。

改善するまでに2ヶ月以上かかることもありますが、アレルゲンを避けられれば、食事のコントロールだけで症状を抑えることができます。

脂漏性皮膚炎の治療

皮脂が多くベタつきが強い脂漏性皮膚炎に対しては、洗浄力・脱脂力の強いシャンプーを使い、皮脂を減らします。皮脂の量がそれほどでもない場合は、抗真菌薬配合のシャンプーを使います。

色素沈着が起きるほど炎症が強い場合は、抗真菌薬の内服を併用します。免疫抑制剤を使用することもあります。

色素沈着は治るの?治療期間は?

原因となっている皮膚の炎症がコントロールできれば、色素沈着は少しずつ薄くなり、元の肌色に近づいていきます(3)。改善までの期間は数週間~数ヶ月程度(皮膚のターンオーバーに依存)くらいです。

ただし、もとの炎症が強く、色素沈着が起きてから時間が経っていると、炎症が落ち着いても色素沈着が長く残ることもあります。黒ずみが残っていても、かゆみや赤みがなければ健康上の問題はありません(3)。

犬アトピー性皮膚炎のように完治が難しい慢性疾患では、炎症の再燃によりふたたび色素沈着が現れる可能性があります(3)。

再発を防ぐには、定期的な通院と治療の継続が必要です。

一度改善しても自己判断で治療を中止せず、獣医師の指示に従うようにしてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 黒ずみは老化現象ではないのですか?

A. 老化だけで色素沈着が起きることは稀です。ほとんどの場合、何らかの皮膚トラブル(炎症、感染、アレルギーなど)が原因です。「年だから」と放置せず、一度診察を受けることをおすすめします。

Q2. 自宅でできるケアはありますか?

A. まずは動物病院で原因を特定することが最優先です。診断後であれば、薬用シャンプーや保湿剤などのスキンケアをご自宅で継続していただくことで、治療効果を高められます。

Q3. 市販の薬で治りますか?

A. 市販薬では根本的な治療はできません。一時的にかゆみが治まっても、原因が残っていれば再発します。また、誤った薬の使用で悪化するリスクもあるため、必ず獣医師の診察を受けてください。

Q4. 治療費はどのくらいかかりますか?

A. 原因や重症度により異なります。初診時の検査・治療費の目安や、継続治療が必要な場合の費用については、診察時に丁寧にご説明します。ご心配なことがあれば遠慮なくお尋ねください。

Q5. 治療中にシャンプーはしてもいいですか?

A. 治療用の薬用シャンプーは、むしろ治療の一環として推奨されます。ただし、通常のシャンプーは皮膚に刺激となる場合があるため、獣医師の指示に従ってください。

Q6. 他の犬にうつりますか?

A. 色素沈着自体は伝染しませんが、原因が感染症(膿皮症、ノミなど)の場合は注意が必要です。多頭飼育の場合は診察時にお伝えください。

📱その他のご質問もLINEで受付中


まとめ:早期発見・早期治療がどうぶつを守る

犬の皮膚の黒ずみ(色素沈着)は、体が発している「炎症が起きている」というサインです。

放置すると症状が悪化したり、治療が長引いたりする可能性があるため、黒ずみを見つけたら早めに動物病院を受診してください

当院では、日本獣医皮膚科学会 認定医 春日陽一郎先生による皮膚科外来を設けており、顕微鏡検査をはじめとした各種検査で原因を正確に特定し、どうぶつとご家族に寄り添った治療を提案します。

「これって病気?」「様子を見ていていい?」と不安なときこそ、お気軽にご相談ください。


行徳どうぶつ病院|皮膚のお悩みはお任せください

📍 千葉県市川市行徳・南行徳エリア
👨‍⚕️ 日本獣医皮膚科学会 認定医 春日陽一郎先生の皮膚科外来あり
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平日夜間・土日も診療受付中。
「ちょっと相談したい」という段階でも大歓迎です。


監修

行徳どうぶつ病院
院長 名古孟大


参考文献

(1)MSD Veterinary Manual. Hyperpigmentation (Acanthosis Nigricans) in Dogs. 2024. https://www.merckvetmanual.com/dog-owners/skin-disorders-of-dogs/hyperpigmentation-acanthosis-nigricans-in-dogs
(2)MSD Veterinary Manual. Primary Acanthosis Nigricans and Postinflammatory Hyperpigmentation in Dogs. 2025. https://www.merckvetmanual.com/integumentary-system/acanthosis-nigricans-and-postinflammatory-hyperpigmentation/primary-acanthosis-nigricans-and-postinflammatory-hyperpigmentation-in-dogs
(3)Diesel A. Cutaneous hyperpigmentation in dogs. PMC. 2021. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8682925/
(4)Bajwa J. Canine Malassezia dermatitis. Can Vet J. 2017;58(10):1119-1121. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5603939/
(5)Pye CC, Singh A. Malassezia species and its significance in canine skin disease. PMC. 2022. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9754143/
(6)Zur G, White SD. Current Knowledge on Canine Atopic Dermatitis: Pathogenesis and Treatment. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2022;52(4):921-952. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9204668/
(7)Oliveira de Souza C, Rosychuk RAW, Contreras ET, Schissler JR, Simpson A. Primary Prevention of Canine Atopic Dermatitis: Breaking the Cycle—A Narrative Review. Animals. 2023;13(21):3359. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10674681/
(8)Olivry T, DeBoer DJ, Favrot C, et al. Treatment of canine atopic dermatitis: 2010 clinical practice guidelines from the International Task Force on Canine Atopic Dermatitis. Vet Dermatol. 2010;21(2):233-248.
(9)Giannoulopoulos GD, Saridomichelakis MN. Canine acral lick dermatitis syndrome. J Hellenic Vet Med Soc. 2012;63(3):227-244. https://ejournals.epublishing.ekt.gr/index.php/jhvms/article/view/15438
(10)Shumaker AK, Angus JC, Coyner KS, et al. Microbiological and histopathological features of canine acral lick dermatitis. Vet Dermatol. 2008;19(5):288-298.