2025.11.21
目次
「愛猫の首に血の固まりがついている」 「首周りを掻きすぎて傷ができている」
このような症状に気づいたら、今この瞬間も、愛猫は激しい痒みに苦しんでいます。
当院(行徳どうぶつ病院)には、首を掻きむしって出血している猫ちゃんが来院されます。飼主様の多くは「ノミかもしれない」と考えて受診されますが、実際には原因がノミだけとは限りません。
**首を血が出るまで掻く行動は、普通ではありません。**
必ず何かしらの原因があり、放置すれば傷が広がり、細菌感染を起こして治療が長引きます。
今回は、猫が首を掻いて血が出る原因と、動物病院でできる治療について解説します。

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猫が首を激しく掻く最大の理由は、我慢できないほどの痒みです。
人間でも、蚊に刺されたところを掻きすぎて血が出た経験はありませんか?猫も同じで、痒みが強ければ強いほど、血が出ても掻き続けてしまいます。
痒みは猫にとって大きなストレスです。掻き続けることで:
こうした悪循環に陥る前に、原因を特定して適切な治療を始めることが何より大切です。
「室内飼いだから大丈夫」と思われるかもしれませんが、実は人間が外からノミを持ち込むケースが非常に多いのです。
ノミアレルギーの特徴:
猫の毛の中に黒い小さな粒(砂粒程度)があれば、それはノミの糞かもしれません。水で濡らしたティッシュに置いて赤茶色ににじめば、ノミの糞である可能性が高いです。
特定の食べ物に含まれるタンパク質に対して、免疫系が過剰に反応する状態です。
猫の皮膚疾患全体の約5~6%が食物アレルギーによるものと報告されています(Olivry & Mueller, 2017)※1。
食物アレルギーの特徴:
診断には、猫が今まで食べたことのない新しいタンパク質を含む「除去食」を8週間以上与える必要があります。この期間、おやつを含めすべての食べ物を制限します。
ヒゼンダニが皮膚に寄生して起こる病気で、非常に強い痒みが特徴です。
耳の中にダニが寄生する病気で、黒い耳垢が大量に出ます。
耳の痒みが強く、頭を振ったり後ろ足で耳を掻いたりします。ひどい場合は耳だけでなく首や頭も掻くことがあります。
環境中のアレルゲン(花粉、ハウスダスト、ダニなど)に対する過敏反応です。顔、首、耳などに症状が出やすく、季節性がある場合もあります。
猫は繊細などうぶつです。ストレスを感じると、過剰に毛づくろいをしたり体を掻いたりすることがあります(Titeux et al., 2018)※2。
ストレスの原因:
首のほか、脇腹や腹部、大腿部内側など、猫が舐めやすい部位に左右対称の脱毛が見られることがあります。
掻き傷から細菌が侵入し、毛包炎を起こすことがあります。これは主に他の皮膚疾患に続いて発症するため、根本的な原因の治療が重要です。
当院では、以下の検査を行い総合的に判断します:
また、必要に応じて血液検査、レントゲン検査、超音波検査などで全身状態を確認します。
まず、猫が首を掻く原因に応じた対処を行います:
炎症や痒みが強い場合は、ステロイド剤や免疫抑制剤(シクロスポリンなど)を使用します(Wisselink & Willemse, 2009)※3。症状に応じて、獣医師が適切な薬を選択します。
掻き傷がある場合、エリザベスカラーの装着が必要です。
「かわいそう」と感じる飼主様も多いですが、エリザベスカラーには重要な役割があります:
最近では、従来の硬いプラスチック製だけでなく、柔らかい布製やドーナツ型など、猫のストレスを軽減するタイプもあります。
装着時の工夫:
通常1-2週間で傷が治癒しますが、**途中で外すと一瞬で舐めてしまい、治療が長引く原因となります。**外すタイミングは必ず獣医師と相談しましょう。
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以下の症状が見られた場合は、なるべく早く当院を受診してください:
「室内飼いだから大丈夫」は危険です。人間が外からノミを持ち込むことがあります。特に3月から11月は必ず予防薬を使用し、冬季もリスクがある場合は継続しましょう。
ノミ駆除用首輪で皮膚炎を起こすケースがあります。首周りに赤みや脱毛が見られたら、スポットオンタイプや経口薬への変更を検討してください。
ノミの卵や幼虫は猫の寝床やカーペットに潜んでいます。定期的な掃除機がけと、寝具の洗濯を習慣化しましょう。
猫がリラックスしている時にブラッシングやボディータッチを通して、皮膚の状態をチェックする習慣をつけましょう。
猫が首を血が出るまで掻く原因は、ノミアレルギー、食物アレルギー、ダニ感染、心因性(ストレス)などがあります。
体の痒みは、猫にとって大きなストレスです。
原因によって治療法が異なるため、自己判断せず動物病院での診察が大切です。
ひどくなる前に、少しでも気になる症状があれば、「様子を見よう」と先延ばしにせず、お気軽に当院へご相談ください。
当院では皮膚科認定医が在籍しております。専門的な診断と治療で、愛猫の皮膚トラブルをしっかりサポートいたします。
春日陽一郎(JAHA皮膚科認定医)
https://animal-chiba.jp/information/yoichiro-kasuga
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記事監修:行徳どうぶつ病院院長 名古孟大
※1 Olivry T, Mueller RS. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (3): prevalence of cutaneous adverse food reactions in dogs and cats. BMC Veterinary Research. 2017;14:51.
※2 Titeux E, Gilbert C, Briand A, Cochet-Faivre N. From Feline Idiopathic Ulcerative Dermatitis to Feline Behavioral Ulcerative Dermatitis: Grooming Repetitive Behaviors Indicators of Poor Welfare in Cats. Frontiers in Veterinary Science. 2018;5:81.
※3 Wisselink MA, Willemse T. The efficacy of cyclosporine A in cats with presumed atopic dermatitis: a double blind, randomised prednisolone-controlled study. The Veterinary Journal. 2009;180:55-59.