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犬と猫の呼吸異常

2023.02.03

患者がおかれている状況を客観的に示す基本的な情報としてバイタルサイン(生命兆候)と呼ばれるものがあります。
生きている証としても重要なバイタルサインとは、心拍数、血圧、体温、そして呼吸数のことです。
心拍数は聴診器、血圧は血圧測定器、体温は体温計(動物は脇ではなくお尻の穴に挿して測ります)が必要となりますが、道具を使わずに家でも簡単に見られるバイタルサインは呼吸です。
今回は犬と猫で見られる呼吸の異常を解説していきます。

①呼吸が早い
呼吸数は一分間で何回の呼気(吐く息)と吸気(吸う息)のサイクルがあったかを数えたもので、犬はおおよそ15回〜30回、猫は20回〜40回くらいが正常と言われています。
ただし犬はパンティング(舌を出してハアハアすること)をするため、その状態だと呼吸数が一分間で100回を超えることもありますが、パンティングは正常な行動であるため、パンティング中の呼吸数はカウントできません。(パンティングの詳細は後述します)
また猫はパンティングをしませんので、口を開けてはあはあするのは開口呼吸と呼ばれます。猫が開口呼吸をするのは呼吸器に問題があることがほとんどです。
ただし、回数はあくまでも目安なので、呼吸数が正常範囲内=問題がないというわけではありません。
走った後はもちろん呼吸が早いですし、眠っている時はいつもよりゆっくり呼吸します。また呼吸の異常があっても、呼吸数は問題ないこともあります。
大切なのは「いつもと違う」という気づきです。
普通の生活の中で浅い呼吸を何度もしていたり、むりやり息を吸うような状態が見られる時は、早めに病院に連れてきてください。

②早すぎるパンティング(犬の場合)
犬は汗をかかないため、はあはあと舌を出して熱を逃がそうとします。パンティングは犬の性格や犬種によって頻度が変わりますが、暑い時以外には、興奮した時、緊張した時などに起きます。
パンティングそのものは正常な行動ですが、夏場にそれが長く続く場合は熱中症のリスクにつながる場合があります。暑い時期に長時間外に外出したり、車で遠出してパンティングが続いている場合は犬の体調に注意しましょう。
ペットの熱中症は夏場によく起こり、死亡例もあります。また短頭種(フレンチブルドック、パグ、イングリッシュブルドック、ペキニーズなど)はパンティングの頻度が高く、また呼吸の問題も同時にかかえている場合が多い犬種です。日本や海外では輸送ストレスによる危険を防ぐため、短頭種の空輸(旅行につれていくことも含む)を禁止していることがあります。

③呼吸の時に音がする
犬ではパンティングをした時に、ガチョウ様の鳴き声と例えられるガーガーとした呼吸音をたてる場合があります。この場合は、気道が狭くなる病気を持っている可能性が考えられます。特にフレンチブルドッグでは、短頭種気道症候群と呼ばれる、3種類の呼吸の病気をいくつか併せ持っていることが多く、ガーガー、フガフガした呼吸がする場合はその可能性が高くなります。また、トイプードル、チワワ、ポメラニアンでは気管虚脱という、呼吸をするたびに気管が潰れる病気よく見られますが。肥満体型の犬でもガーガーした音が聞こえることがあります。
どちらの病気もドッグランで長く走れないこと(運動不耐性)や、重症の場合は突然気を失う、酸素が足りず舌が青白くなるといった症状が現れます。レントゲン検査で明らかな気道の異常があれば、薬で呼吸を楽にしたり、また病気の種類によりますが、手術で症状を改善させることもできます。
猫はパンティングをしないのでまれですが、呼吸で音がなるのは異常です。猫は呼吸器の病気が多いので、おかしいと思ったら病院にかかりましょう。

④舌が青白い
舌が普段より灰色っぽくなったり、青白くなっている時はチアノーゼかもしれません。チアノーゼは体の中の酸素が足りていない状態を示す指標で、原因は呼吸の異常と循環(心臓や血液)の異常、どちらかが考えられます。チアノーゼが長く続くと命にかかわるため、気がついたらすぐに動物病院に連れてきてください。

⑤咳をする、何度もくしゃみをする
咳やくしゃみの回数が増えるというのも、呼吸の問題が隠れている場合があります。
咳は喉(気管支)の異常か心臓(循環器)の異常、くしゃみは鼻(上部気道)の異常であることがほとんどです。
しかしながら、飼い主さんがくしゃみや咳だと思ったものが全く違うものだったという場合もよくあります。病院では症状が現れない・再現できないことがほとんどなので、くしゃみや咳は来院前に動画で撮影しておくことをおすすめしています。

まとめ
呼吸の問題は緊急性が高いものがほとんどですが、実際に呼吸器の症状がある犬猫は元気食欲に問題なく、飼い主さんの印象としても「いつもよりちょっと息が荒い」以外に症状がないこともあります。
人間の医療では低酸素状態が続くと多幸感が現れ、苦しさを訴えずむしろ元気になる患者さんがいると報告されています。しかし、動物の医療で同じような症状があるのかはわかりません。
いずれにしても、呼吸の異常は放っておくと命にかかわることが多いため、「おかしいな?」と思ったら、早めに受診してください。

浦安、行徳近辺で犬と猫の呼吸異常について詳しくお聞きになりたい場合は、お気軽に行徳どうぶつ病院グループまでお尋ねくださいませ。

行徳どうぶつ病院
獣医師
大山 美雪