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【獣医師が解説】犬の脂漏性皮膚炎とは?フケ・ベタつき・においの原因と治療法

2026.01.30

愛犬の体を撫でたとき、手にフケがたくさんついていたことはありませんか?

シャンプーしたばかりなのに、すぐに皮膚がベタベタして脂っぽくなったり、独特のにおいがしたり…。

それは脂漏性皮膚炎のサインかもしれません。

「フケくらい大丈夫」と思われるかもしれませんが、脂漏性皮膚炎は放置すると症状が悪化し、愛犬が強いかゆみに苦しんだり、皮膚が厚くゴワゴワになってしまうこともあります。また、実はアレルギーやホルモンの病気など、他の病気が隠れているサインの場合も少なくありません。

行徳どうぶつ病院では、日本獣医皮膚科学会認定医の春日陽一郎先生による専門外来を設けており、脂漏性皮膚炎をはじめとする皮膚トラブルの診断・治療に力を入れています。

この記事では、脂漏性皮膚炎がどのような病気なのか、原因、症状、そして治療法について詳しく解説します。


脂漏性皮膚炎とは?

脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌などにより、マラセチアというカビの一種が増えすぎることで起こる皮膚の病気です

マラセチアは健康な犬の皮膚にも普通に存在していますが、何らかの原因で皮脂が増えると、それを栄養源として爆発的に増殖し、皮膚に炎症を引き起こします

マラセチアとは

マラセチアは皮膚表面に生息する酵母様真菌(カビの一種)で、皮膚から出る皮脂を栄養源としています。通常は問題を起こしませんが、皮脂が増えると急激に数が増え、皮膚炎の原因となります。


脂漏性皮膚炎の症状

脂漏性皮膚炎では、次のような変化が見られます。

  • 大量のフケ(白いフケや黄色っぽいフケ)(2)
  • 皮膚のベタつき(触るとヌルヌル・ベタベタする)(2)
  • 独特のにおい(脂臭い、酸っぱいようなにおい)(2)
  • 皮膚の赤み(1)(3)
  • 痒み(体を掻いたり舐めたりする)(1)(3)
  • 部分的な脱毛(3)
  • 皮膚が厚くゴワゴワになる(慢性化した場合)(3)
  • 皮膚の黒ずみ(慢性化した場合)(3)

脂漏性皮膚炎が出やすい場所

症状は特に皮膚がたるんでいる部分など、皮脂を分泌する腺が多い場所に現れやすい傾向があります。(1)。

  • 背中
  • 首の下
  • 耳の縁
  • 脇の下
  • お腹
  • 足の指の間

該当する症状があれば、早めの受診をおすすめします。

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※皮膚科認定医 春日先生のご予約はお電話でのみ受け付けております。


マラセチアが増えてしまう原因

マラセチアが増える原因は、いくつかの要因が関わって起こります。

1. 犬種

生まれつきの体質として皮脂が過剰に分泌されやすい犬種がいます(1)。

  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • シーズー
  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • プードル
  • 柴犬

これらの犬種を飼っている方は、日頃から皮膚の状態をよく観察することが大切です。

2. 基礎疾患の影響

実は、脂漏性皮膚炎の多くは他の病気が原因で起こる「二次的なもの」です(1)。

そのため、フケやベタつきの裏に別の病気が隠れていないか、しっかり調べる必要があります。

アトピー性皮膚炎

花粉やハウスダスト、カビなど環境中のアレルゲンに対するアレルギー反応で、皮膚のバリア機能が低下し、脂漏性皮膚炎を引き起こします(6)。

特に5歳未満で症状が出た場合は、アレルギーが背景にある可能性が高くなります(1)。

食物アレルギー

特定の食べ物(牛肉、鶏肉、小麦、大豆など)に対するアレルギー反応が、皮膚の炎症と皮膚サイクルの乱れを引き起こすことがあります(6)。

ホルモンの病気(内分泌疾患)

中高齢の犬では、ホルモンの病気が影響してマラセチアが増殖し、脂漏性皮膚炎が生じることがあります(1)。

代表的なものとして甲状腺機能低下症、クッシング症候群が挙げられます。

その他

この他にも、ノミ、疥癬、ニキビダニなどの寄生虫、亜鉛やビタミンAの不足、自己免疫疾患などもマラセチアが増殖する原因になることがあります(6)。

3. 高温多湿の環境

ジメジメした暑い環境は、マラセチアが増えやすい条件です(5)。

梅雨時や夏場に症状が悪化することが多いのは、このためです。


動物病院での検査

脂漏性皮膚炎の診断では、症状の原因を特定するために複数の検査を組み合わせます(1)。

皮膚の観察

皮膚の状態を詳しく見ていきます。どこに症状が出ているか、赤みや脱毛の有無、皮膚の厚さや色などを確認します(1)。

皮膚検査

皮膚の表面からサンプルを採取し、顕微鏡でマラセチアや細菌がいないか、どのくらいの数がいるかを調べます(3)(5)。透明テープを皮膚に貼って剥がす方法や、スライドガラスを押し当てる方法、綿棒で拭き取る方法などがあります。

また、皮膚の表面を軽く削り取って、顕微鏡で疥癬やニキビダニなどの寄生虫の有無を確認します(1)。

血液検査(ホルモン検査)

中高齢で、あまりかゆがらない脂漏性皮膚炎の場合は、ホルモンの病気を疑います(1)。血液検査で甲状腺ホルモンやコルチゾールを測定し、甲状腺機能低下症やクッシング症候群がないかを調べます(7)(8)。

皮膚の組織検査

他の検査で原因がはっきりしない時や、生まれつきの脂漏性皮膚炎が疑われる時には、皮膚の一部を採取して詳しく調べることもあります(1)。

アレルギー検査

アレルギーが疑われる場合は、食事を変えて様子を見る除去試験や、アレルゲンを特定する検査を行うこともあります。

行徳どうぶつ病院では、日本獣医皮膚科学会認定医の春日陽一郎先生による専門外来で、より専門的な診断・治療を受けることができます。

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脂漏性皮膚炎の治療

脂漏性皮膚炎の治療では、原因となっている病気の治療と、薬用シャンプーによるケアが中心になります。

1. 原因となる病気の治療

他の病気が原因で起こっている脂漏性皮膚炎では、その病気を治療することが最も大切です(1)。

食物アレルギーの場合

原因となる食材を避けた療法食に切り替えます。(6)

アトピー性皮膚炎の場合

アレルゲンとの接触を減らす工夫、アレルゲン特異的免疫療法、かゆみや炎症を抑える薬などで管理していきます。(6)

ホルモンの病気の場合

不足している甲状腺ホルモンを薬で補う治療(8)や、副腎の働きをコントロールします(9)。

寄生虫の場合

関与している可能性がある寄生虫(ノミ、疥癬、ニキビダニ)を駆虫する駆虫剤を使って治療します。駆虫薬の種類は獣医師の判断に従って、適切なものを使用します。

2. シャンプー療法

薬用シャンプーによるケアは、脂漏性皮膚炎の管理にとても重要です(1)(10)。シャンプーには、余分な角質や皮脂を取り除き、マラセチアや細菌を減らし、かゆみを和らげる効果があります。

シャンプー剤の種類

症状に合わせて、以下のような成分が入った薬用シャンプーを使います(1)(10)。

  • 過剰な角質を取り除く成分
  • 皮膚サイクルを整える成分
  • 細菌を抑える成分(11)
  • マラセチアを抑える成分(5)(12)
  • 保湿成分

シャンプーの頻度と方法

シャンプーを皮膚にしっかりと馴染ませ、5〜15分ほど時間を置いてから、十分に洗い流すことが大切です。

シャンプーの頻度は皮膚の状態によって異なりますので、詳細は獣医師にご相談下さい。

3. マラセチアや細菌感染への対応

マラセチアや細菌が増えている場合は、それぞれに合わせた治療を行います。

マラセチアへの治療

抗真菌シャンプー(ミコナゾール、ケトコナゾールなど)で対応しますが(5)(12)、症状が重い場合や広い範囲に及んでいる場合は、イトラコナゾールやフルコナゾールといった抗真菌剤を3〜4週間使います(5)(12)。

細菌への治療

抗菌シャンプー(クロルヘキシジン、過酸化ベンゾイルなど)、状態に応じて抗生剤(セファロスポリン系など)を組み合わせて使います(1)。

4. かゆみへの治療

シャンプーだけでは十分に良くならない場合やかゆみがひどい場合は、一時的にステロイド剤や免疫抑制剤、抗掻痒剤を使用します。

脂漏性皮膚炎の治療で悩まれている方は、是非一度、当院にご相談ください。

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ご自宅でできるケア

動物病院での治療効果を高めるために、ご自宅でできるケアについてご紹介します。

1. 定期的なシャンプー

獣医師から処方された薬用シャンプーを、指定の頻度で使用してください。自己判断で中止したり、頻度を変えたりしないようにしましょう。

2. 環境を整える

ジメジメした暑い環境は症状を悪化させることがあります。室温と湿度を適度に保ち、清潔な環境を維持しましょう。ベッドやタオルは定期的に洗濯して清潔に保ちます。

3. 食事の管理

食物アレルギーが原因の場合は、獣医師が勧める療法食を続けましょう。また、亜鉛や必須脂肪酸のサプリメントが役立つこともあります(6)。

4. 症状の変化を記録する

フケの量、においの強さ、かゆがる様子、赤みの程度など、日々の変化を観察しましょう。良くなっているか、悪くなっているかを獣医師に伝えることで、治療効果を評価できます。定期的な再診を忘れずに受けましょう。


まとめ

脂漏性皮膚炎は、皮膚サイクルの乱れによってフケ、ベタつき、においなどが現れる皮膚の病気です。生まれつきの体質によるものと、他の病気が原因で起こるものがあり、多くは後者です。そのため、表面的な症状だけでなく、根本原因をしっかり調べることが大切です。

治療では、原因となる病気の管理と、薬用シャンプーによる定期的なケアが中心になります。マラセチアや細菌が増えている場合は、抗真菌薬や抗生物質も使用します。

フケが多い、皮膚がベタベタする、においが気になるといった症状に気づいたら、早めに当院までご相談下さい。

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(FAQ)脂漏性皮膚炎に関するよくあるご質問

Q1. 犬の脂漏性皮膚炎は自然に治りますか?

A. 自然に治ることは期待できません。脂漏性皮膚炎の多くは他の病気が原因で起こるため、適切な治療が必要です。

Q2. シャンプーはどのくらいの頻度でしたらいいですか?

A. 愛犬の皮膚の状態によって異なります。必ず獣医師の指示に従ってください。自己判断で頻度を変えると、逆に皮膚の状態を悪化させてしまうこともあるので注意しましょう。

Q3. 市販のシャンプーでも効果はありますか?

A. 脂漏性皮膚炎には、症状に合わせた薬用シャンプーが必要です。市販のシャンプーでは効果が不十分な場合が多いため、動物病院で処方されたものを使用してください。

Q4. 食事を変えれば治りますか?

A. 食物アレルギーが原因の場合は、療法食への変更が効果的です。ただし、脂漏性皮膚炎の原因は様々なため、まずは検査で原因を特定することが大切です。自己判断での食事変更はおすすめしません。

Q5. 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

A. 原因や症状の程度によって異なります。マラセチアの治療だけなら数週間で改善することもありますが、アレルギーやホルモンの病気が原因の場合は長期的な管理が必要になります。定期的な再診で治療効果を確認しながら進めていきます。

Q6. 治療費はどのくらいかかりますか?

A. 検査内容や治療方法によって異なります。初診時には皮膚検査、場合によっては血液検査なども行います。詳しくは来院時にご説明いたしますので、お気軽にお問い合わせください。


監修:行徳どうぶつ病院 院長 名古孟大


引用文献リスト
(1) Merck Veterinary Manual. Seborrhea in Dogs \- Dog Owners. 2024\.
(2) Merck Veterinary Manual. Seborrhea in Animals. 2024\.
(3) Frank LA. Comparative dermatology–canine endocrine dermatoses. Clin Dermatol. 2006;24(4):317-325.
(4) American Animal Hospital Association. Canine Hypothyroidism Diagnostic Testing and Monitoring. 2024\.
(5) Quishpe Contreras L, Gomes Pöppl Á. Canine atypical hyperadrenocorticism associated with hypothyroidism. J MVZ Cordoba. 2019;24(2):7262-7267.
(6) Bond R, et al. Biology, diagnosis and treatment of Malassezia dermatitis in dogs and cats \- Clinical Consensus Guidelines. Vet Dermatol. 2020;31(1):27-46.
(7) Kondratjeva J, Brun J, Amalric N, et al. Performance and Tolerance of a Protocol for Idiopathic Chronic Greasy Seborrhea in 18 Dogs Using a Shampoo and Mousse Containing Plant Extracts. Vet Sci. 2023;10(2):95.
(8) Bajwa J. Canine Malassezia dermatitis. Can Vet J. 2017;58(10):1119-1121.
(9) Miller WH, et al. Malassezia species and its significance in canine skin disease. Can Vet J. 2022;63(12):1281-1286.
(10) Rosenkrantz WR. Practical Applications of Topical Therapy for Allergic, Infectious and Seborrheic disorders. Clin Tech Small Anim Pract. 2006;21:106-117.
(11) Loeffler A, Cobb MA, Bond R. Comparison of a chlorhexidine and a benzoyl peroxide shampoo as sole treatment in canine superficial pyoderma. Vet Rec. 2011;169(10):249.
(12) Nègre A, Bensignor E, Guillot J. Evidence-based veterinary dermatology: a systematic review of interventions for Malassezia dermatitis in dogs. Vet Dermatol. 2009;20:1-12.