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犬の毛が抜ける病気とは|換毛期以外の脱毛は危険なサイン!獣医師が詳しく解説

2025.12.08

「最近、愛犬の毛がいつもより抜ける気がする…」 「ブラッシングのたびに、ごっそり毛が抜けて心配」

そんな不安を感じていませんか?

実は、換毛期以外の脱毛は、病気のサインかもしれません。放置していると、どうぶつの体では症状が進行している可能性があります。

この記事では、犬の脱毛を引き起こす病気について、行徳どうぶつ病院の獣医師が詳しく解説します。大切な家族の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。

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「換毛期だから大丈夫」と思っていませんか?

「春と秋は毛が抜けるものだから…」と思っていませんか?

確かに、ダブルコートの犬種(柴犬、コーギー、ゴールデンレトリバーなど)は、季節の変わり目に大量の毛が抜けます。これは正常な生理現象です。

しかし、以下のような症状がひとつでもあれば、動物病院での診察をおすすめします:

  • 換毛期ではない時期に急に抜け始めた
  • 円形や不規則な形で部分的に抜けている
  • 皮膚が赤い、ガサガサしている
  • フケやかさぶたが出ている
  • 愛犬がしきりに体を掻いたり舐めたりしている
  • 左右で毛の抜け方が違う
  • 毛が途中で切れたように短くなっている

実は、脱毛のパターンは獣医師にとって重要な診断の手がかりです。獣医学の専門誌によると、部分的な脱毛は炎症性の皮膚病、左右対称な脱毛はホルモンの病気に多いとされています(1)。

自己判断での対処は難しいため、少しでも気になったらご相談ください。

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こんな症状があれば早めの受診を

次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします

  • 皮膚がただれている、膿が出ている
    → 細菌感染が進行している可能性があります
  • 顔や足の一部が円形に脱毛している
    → 真菌(カビ)感染の可能性があり、人にもうつることがあります
  • 脱毛に加えて、水をたくさん飲む、お腹が膨らんできた
    → ホルモンの病気(クッシング症候群など)の可能性があります
  • 元気がない、食欲がない
    → 全身性の病気が隠れている可能性があります

どうぶつは言葉で「痛い」「かゆい」と伝えられません。飼主様が気づいてあげることが大切です。

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犬の脱毛を引き起こす主な病気

1. 膿皮症(のうひしょう)

どんな病気?
皮膚の細菌感染により、毛の根元(毛包)が炎症を起こして毛が抜ける病気です。通常、皮膚表面にいるブドウ球菌などの細菌が原因で、赤みや膿、かゆみを伴うことが多いです。

こんな症状に注意:

  • 皮膚に赤いポツポツができている
  • 膿のようなものが出ている
  • しきりに体を掻いている

適切な治療で改善が期待できる病気ですが、早めの対処が大切です。

2. アトピー性皮膚炎

どんな病気?
遺伝的な体質により、ハウスダストや花粉などに過敏に反応してしまう慢性的な皮膚病です。世界獣医皮膚科学会の診断ガイドラインでは、特に顔周り(目の周り、口周り)、耳の内側、足先、脇の下、お腹、股の間が最も影響を受けやすい部位とされています(5)。犬種によって病変が出やすい部位に違いがあることも報告されています。

こんな症状に注意:

  • 目や口の周り、足先が赤い
  • 耳の中がいつも汚れている
  • 一年中かゆがっている
  • 皮膚が黒ずんできた(慢性化のサイン)

発症初期は、かゆみ単独、あるいは赤みや丘疹(ぶつぶつ)を伴います(5)。慢性化すると、引っ掻きや舐めることによる脱毛、色素沈着(黒ずみ)、皮膚の肥厚が見られるようになります(6)。

アトピー性皮膚炎は長期的な管理が必要な病気ですが、適切な治療で症状をコントロールできます。

3. 食物アレルギー

どんな病気?
特定の食べ物(牛肉、鶏肉、小麦、大豆など)に体が過剰反応して、かゆみや脱毛が起こります。アトピー性皮膚炎と症状が似ていますが、季節に関係なく一年中症状があるのが特徴です。

診断には、除去食試験という方法で原因を特定していきます。

4. 甲状腺機能低下症

どんな病気?
首にある甲状腺というホルモンを作る臓器の働きが弱くなる病気です。犬で最も多い内分泌疾患(ホルモンの病気)のひとつです(7)。

甲状腺から分泌されるサイロキシンというホルモンが不足することにより、さまざまな症状があらわれます。脱毛、被毛の変化(乾燥、くすみ、フケ、鱗屑、粗さ、毛の再生の遅れ)、色素沈着、膿皮症が一般的な臨床症状として報告されています(8)。

こんな症状に注意:

  • 毛がパサパサ、フケが増えた
  • 全体的に毛が薄くなった
  • 最近太ってきた、運動を嫌がる
  • 元気がなくなった

他に、活動性の低下や肥満、体重増加を伴うことが多いです。(11)

甲状腺機能低下症の診断には、臨床症状と甲状腺ホルモン検査を統合して行います(10)。適切な投薬治療で症状の改善が期待できます。

5. クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

どんな病気?
副腎という臓器からステロイドホルモンが過剰に分泌される病気です。副腎皮質機能亢進症の最も一般的な皮膚症状は、頭部と四肢の先端を除く左右対称な脱毛です(7)。

こんな症状に注意:

  • 水をたくさん飲む、おしっこが増えた
  • 食欲が異常に増えた
  • お腹がポッコリ膨らんできた
  • 体の毛が左右対称に抜けてきた

多飲多尿、多食、お腹の膨らみなども認められます。免疫抑制に関連して、膿皮症もよく見られる所見です(7)。

血液検査やホルモン検査で診断し、内服薬での治療が中心となります。

6. 皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)

どんな病気?
真菌(カビの仲間)による感染症です。人にうつることもあるため、注意が必要です(人獣共通感染症)。

ある研究では、皮膚病変(脱毛と落屑)を持つ犬と猫362頭を調査したところ、19.3%で皮膚糸状菌が培養陽性と報告されています(4)。また、1歳未満の若齢犬と猫では、他の年齢層と比較して統計学的に有意に高い発症率が認められました(4)。

こんな症状に注意:

  • 円形に毛が抜けている
  • 脱毛部分の皮膚がカサカサ、フケが出る
  • かさぶたができている

主な特徴として、円形の脱毛、赤み、フケ、かさぶたがあり、病変部位は顔、足、尾に多く見られます(3)。

診断には、被毛と皮屑の直接顕微鏡検査や真菌培養が用いられます(2)。家族への感染を防ぐためにも、早めの受診をおすすめします。

真菌感染が心配な方はLINEで相談

その他の脱毛の原因

アロペシアX(毛周期停止症)

アロペシアXは、ポメラニアンに特に多く見られる毛周期停止疾患です。ポメラニアン、キースホンド、チャウチャウ、ミニチュアプードル、シベリアンハスキーなどに多いです(13)。

頭部と四肢の先端を除く、体幹部の左右対称な脱毛が見られ、一般的にはかゆみや炎症はないです。見た目の変化が気になる飼主様が多い病気です。

毛周期(毛の生え変わりのサイクル)が止まってしまうことが原因と考えられており、治療法はいくつか報告されています(12, 15, 16)。

腫瘍(できもの)

まれですが、皮膚の腫瘍や全身性のリンパ腫などが脱毛の原因となることがあります。しこりや皮膚の肥厚、全身状態の悪化を伴う場合は、検査が必要です。

動物病院を受診する前に確認してほしいこと

動物病院を受診される際、以下の情報があると診断がスムーズです:

皮膚の状態

  • 赤み、フケ、かさぶた、膿はあるか
  • 色素沈着(黒ずみ)や皮膚の肥厚はあるか
  • 触ると痛がるか、熱を持っているか

愛犬の様子

  • 元気や食欲はあるか
  • 水を飲む量や尿の量に変化はないか
  • 体重の増減はあるか
  • 疲れやすくなっていないか

脱毛の様子

  • どこが抜けているか(写真があると◎)
  • 限局的か、全身性か
  • 左右対称か、非対称か
  • 季節性があるか
  • いつから抜け始めたか

生活環境

  • 他の犬や猫との接触歴はあるか
  • 最近の環境変化(引っ越し、家族構成の変化、新しいどうぶつの導入など)はあるか
  • フードの変更の有無

かゆみの有無

  • しきりに掻いたり舐めたりしているか

LINEでご相談いただく際は、脱毛部分の写真を送っていただけると、より的確なアドバイスが可能です。

LINEで写真を送って相談する

行徳どうぶつ病院の皮膚科診療

当院では、日本獣医皮膚科学会 認定医の春日陽一郎先生による皮膚科診療を行っております。

皮膚病の診断には、以下の検査を実施します:

  • 皮膚検査:顕微鏡で細菌、真菌、寄生虫などを確認
  • 血液検査:ホルモン値や内臓機能をチェック
  • 皮膚生検:必要に応じて組織を調べます
  • アレルギー検査:食物アレルギーやアトピーの診断

診断に基づいて、それぞれのどうぶつに合った治療を提案します。

大切なのは早期発見・早期治療です。多くの皮膚疾患は、早く治療を始めることで良好に管理できます。

まとめ|気になる症状があればご相談を

愛犬の毛が抜けている…その症状、見過ごさないでください。

  • 換毛期以外の脱毛は病気のサインかもしれません
  • 皮膚の赤み、かゆみ、左右非対称な脱毛は要注意
  • 真菌感染は人にうつることがあります
  • ホルモンの病気は全身の健康に影響します

犬の脱毛の原因は多岐にわたり、感染症、アレルギー、ホルモン異常、遺伝的疾患など様々です。適切な診断には、皮膚検査、血液検査、場合によっては皮膚生検などが必要となります。

どうぶつは自分で症状を訴えられません。飼主様が気づいて、連れてきてあげることが大切です。

脱毛のパターンや皮膚の状態、全身症状を観察し、早期に獣医師に相談することが重要です。

少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。LINEなら24時間いつでも予約・相談が可能です。

愛犬の健康な被毛と皮膚を保つために、日々のケアと観察を大切にしていきましょう。

今すぐLINEで相談・予約する


監修:行徳どうぶつ病院
院長 名古孟大


参考文献

(1) Today’s Veterinary Practice. Understanding and Treating Canine Alopecic Dermatoses. February 19, 2025. Available from: https://todaysveterinarypractice.com/dermatology/understanding-and-treating-canine-alopecic-dermatoses/
(2) Moriello KA, Coyner K, Paterson S, Mignon B. Diagnosis and treatment of dermatophytosis in dogs and cats: Clinical Consensus Guidelines of the World Association for Veterinary Dermatology. Vet Dermatol. 2017;28(3):266-e68.
(3) Maina E, Galzerano M. Dermatophytosis in companion animals: A review. Vet World. 2020;13(7):1387-1394.
(4) Cafarchia C, Romito D, Capelli G, Guillot J, Otranto D. Isolation of dermatophytes from dogs and cats with suspected dermatophytosis in Western Turkey. Prev Vet Med. 2011;98(1):39-45.
(5) Favrot C, Steffan J, Seewald W, Picco F. Canine atopic dermatitis: detailed guidelines for diagnosis and allergen identification. BMC Vet Res. 2015;11:196.
(6) Pucheu-Haston CM, Bizikova P, Eisenschenk MNC, Marsella R, Nuttall T, Santoro D. Current Knowledge on Canine Atopic Dermatitis: Pathogenesis and Treatment. Vet Sci. 2022;9(7):355.
(7) Frank LA. Comparative dermatology–canine endocrine dermatoses. Clin Dermatol. 2006;24(4):317-25.(8) Müller GH, Kirk RW. Canine hypothyroidism: a retrospective study of 108 cases. J Am Vet Med Assoc. 1980;177(12):1117-22.
(9) Dixon RM, Reid SW, Mooney CT. Epidemiological, clinical, haematological and biochemical characteristics of canine hypothyroidism. Vet Rec. 1999;145(17):481-7.
(10) Stogdale L. The diagnosis and treatment of canine hypothyroidism. J S Afr Vet Assoc. 1980;51(1):46-8.
(11) Abdel-Hafez AA, et al. Incidence, complications and therapeutic evaluation of clinical hypothyroidism in different breeds of dogs. Alexandria J Vet Sci. 2024.
(12) Brunner MAT, Jagannathan V, Waluk DP, Roosje P, Linek M, Panakova L, Leeb T, Wiener DJ, Welle MM. Novel insights into the pathways regulating the canine hair cycle and their deregulation in alopecia X. PLoS One. 2017;12(10):e0186469.
(13) Albanese F, Malerba E, Abramo F, Miragliotta V, Fracassi F. Deslorelin for the treatment of hair cycle arrest in intact male dogs. Vet Dermatol. 2014;25(6):519-22.
(14) Suvayarak S, et al. Evaluation of phenotypic risk indicators for the development of alopecia X (hair cycle arrest) in Pomeranian dogs in the Netherlands and Belgium. Vet Dermatol. 2025;36(2):172-181.
(15) Frank LA, Hnilica KA, Oliver JW. Adrenal steroid hormone concentrations in dogs with hair cycle arrest (Alopecia X) before and during treatment with melatonin and mitotane. Vet Dermatol. 2004;15(5):278-84.
(16) Layne EA, Richmond RV. Deslorelin Implant Treatment for Hair Cycle Arrest (Alopecia X) in Two Intact Male Keeshonden. J Am Anim Hosp Assoc. 2018;54(4):231-234.