2024.11.28
猫も人と同様に高齢になると、様々な老化現象が現れます。関節の痛み、視力や聴力の低下、内臓機能の衰えが一般的ですが、特に注目すべきは、認知機能の低下です。これは、人間の認知症と似た症状で、猫も認知症になることが報告されています。この記事では、猫の認知症について詳しく解説します。
認知症は、脳の障害によって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。猫の場合、主な原因は老化ですが、脳梗塞や脳腫瘍などの疾患が引き金になることもあります。特に10歳を過ぎた猫で認知機能の低下が見られ始め、15歳以上の猫ではその半数が何らかの認知症の兆候を示すことが多いとされています。これは人の認知症と非常に似たメカニズムです。
人間のアルツハイマー病は、脳に老廃物が蓄積し、神経細胞が損傷を受けることで発症します。脳の萎縮が進行し、認知機能が低下していくのが特徴です。以前は、アルツハイマー病は人特有の病気と考えられていましたが、最近の研究で猫にも似た現象が起きることが確認されました。これにより、猫の認知症の研究が、人間のアルツハイマー病の解明に役立つのではないかという期待が高まっています。
猫が認知症を発症すると、無駄鳴きや夜鳴き、徘徊、粗相などの行動が見られることがあります。これまできちんとトイレで排泄していた猫がトイレの場所を忘れるようになることもあります。また、性格や好みの変化も顕著で、飼い主を認識しなくなったり、以前は好きだった遊びや食べ物に興味を示さなくなることがあります。場合によっては、攻撃的になったり、逆に非常におとなしくなることもあります。
無駄鳴きは特に困難な症状の一つで、昼夜逆転の生活を送ることがあり、飼い主にとっても大きな負担となります。また、甲状腺機能亢進症や高血圧といった高齢の猫に多い疾患とも関連している場合もあり、単なる認知症の症状と断定する前に、他の病気が原因でないかどうかを確認することが重要です。
現在、猫の認知症を診断するための確立された検査方法はありません。しかし、血液検査や画像検査を通じて、他の疾患が原因でないことを確認しながら診断を進めます。脳の萎縮や血管障害を確認するためには、CTやMRIの検査が必要になることもありますが、高齢の猫に全身麻酔をかけるリスクも考慮し、慎重に選択する必要があります。
認知症の治療薬は現在存在していませんが、人間のアルツハイマー病治療薬の一部が猫に対しても有効である可能性が示唆されています。症状の緩和を目指した治療が行われることがありますが、すべての猫に効果があるわけではありません。
猫の認知症を完全に予防することは難しいですが、生活環境の整備や適切なケアによって進行を遅らせたり、症状を軽減させることが可能です。たとえば、声をかけたり、一緒に遊んだりすることで脳に刺激を与え、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。名前を呼んでコミュニケーションをとることや、遊びを通じて脳を活性化させることが有効です。
また、適度な運動や日光浴を通じてセロトニンの分泌を促すことも、猫の情緒を安定させる上で重要です。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、不安を和らげ、気持ちを落ち着かせる効果があるため、認知症の猫にも有益です。
猫の認知症は、老化とともに進行することが多く、人の認知症と多くの共通点があります。認知機能が低下することによって、生活に支障をきたす行動が現れるため、早期発見と適切なケアが重要です。
浦安、行徳近辺で猫の認知症について詳しくお聞きになりたい場合は、お気軽に行徳どうぶつ病院グループまでお尋ねくださいませ。
行徳どうぶつ病院
獣医師
陶山 雄一郎