2024.10.25
犬の耳は、外耳、中耳、内耳と分かれていますが、中耳炎とは、この中耳で炎症が発生する状態を指します。中耳は、聴覚の維持や耳の健康に重要な役割を果たしており、神経も通っています。外耳炎と異なり、中耳炎は治療しないと内耳まで炎症が広がる恐れがあります。今回は、犬の中耳炎についてご説明します。
犬の中耳の構造には、鼓膜、耳小骨、耳管、鼓室胞が含まれます。鼓膜と耳小骨は、外耳から伝わってきた音を内耳に効率よく伝える役割を担っています。一方、耳管と鼓室胞は、中耳と内耳の環境を整え、外部からの圧力変動や異物を排除する機能を持っています。耳管の機能不全が中耳炎を引き起こす可能性もあるため、耳の健康維持には注意が必要です。
また、中耳内には顔面神経と眼の交感神経が通っています。これらの神経が中耳炎により障害を受けると、顔面神経麻痺やホルネル症候群といった症状が現れることがあります。
中耳炎の多くは、外耳炎から炎症が広がることで発症します。中耳炎の典型的な症状には、強い耳の痛みがあり、犬が耳を触られることを極端に嫌がることが多いです。しかし、外耳炎や内耳炎と症状が重なることがあり、慢性的な中耳炎は見逃されやすいのが実情です。
中耳炎の際に特に注目すべきは、神経症状の出現です。顔面神経が障害されると、片側の顔面に食べ物が溜まったり、口唇が垂れ下がるなどの症状が見られます。さらに、ホルネル症候群という状態も現れることがあります。
中耳炎は、主に細菌感染による外耳炎から炎症が広がることで発症します。慢性再発性の外耳炎を持つ犬は特に中耳炎になりやすい傾向があります。また、中耳内の腫瘍や鼓膜の損傷によっても中耳炎が発生することがあります。
中耳炎による神経障害は、診察時に初めて気づくことが多いです。ホルネル症候群の症状として、第三眼瞼の突出や瞳孔の縮小、眼瞼下垂、眼球の奥への陥入が挙げられます。これらの症状は見逃しやすいため、早期の診断が重要です。
中耳炎の診断や治療のために行われる検査には、耳鏡検査や耳垢検査、X線検査、CT検査、MRI検査などがあります。耳内視鏡で外耳道や鼓膜の異常を観察したり、鼓膜切開で中耳内の洗浄を行うこともあります。症状や治療への反応に応じて、これらの検査が選択されます。
中耳炎の治療には、外耳炎の治療と並行して、抗炎症剤や抗生剤の投与が行われます。鼓膜切開による中耳内の洗浄や、必要に応じて外耳道や中耳の手術も考慮されます。CT検査やMRI検査によって、手術が必要かどうかの判断が行われる場合もあります。
中耳炎の予防において最も重要なのは、外耳炎の早期治療です。日常的に犬の耳や行動をチェックし、異常を見逃さないことが大切です。耳垢が増えた場合、家で無理に耳掃除をせず、動物病院での診察を受けましょう。
また、耳の毛が密に生える犬種は、定期的にトリミングや動物病院で耳の毛を抜いてもらうと良いでしょう。外耳炎の予防策を徹底することで、中耳炎の発症リスクを減らすことが可能です。
浦安、行徳近辺で犬の中耳炎について詳しくお聞きになりたい場合は、お気軽に行徳どうぶつ病院グループまでお尋ねくださいませ。
行徳どうぶつ病院
獣医師
陶山 雄一郎