2025.11.07
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「また掻いてる…」「夜中もカリカリして眠れなさそう…」
愛犬が体を掻きむしる姿、見ているだけで胸が痛みますよね。皮膚が赤くなっていたり、毛が抜けていたりすると、「これって大丈夫なの?」と不安になる飼主様も多いと思います。
結論から言います。かゆみが出たら、早めに動物病院を受診してください。
なぜなら、犬のかゆみには様々な原因があり、原因によって治療法がまったく違うからです。自己判断での対処は、症状を悪化させたり、どうぶつを苦しめる時間を長引かせたりする可能性があります。
この記事では、愛犬のかゆみの原因と、動物病院での検査・治療の流れを、できるだけわかりやすくお伝えします。病院に行く前に読んでおくと、診察がスムーズになりますよ。

この記事でわかること
犬がかゆがる原因は、主に以下の6つに分けられます。
皮膚の常在菌であるブドウ球菌などが異常に増えて起こります。赤い発疹や、膿を持った湿疹が見られます(Loeffler et al., 2025)。
「かゆい→掻く→皮膚が傷つく→細菌が増える→もっとかゆくなる」という悪循環に陥ることも。
アレルギーなどの基礎疾患があると発症しやすくなるため、表面的な治療だけでなく根本原因への対処が必要です(Loeffler et al., 2025)。
花粉、ハウスダスト、カビなど、環境中のアレルゲンに対する過敏反応です。人間の花粉症のようなものと考えるとわかりやすいですね。
柴犬、シーズー、フレンチブルドッグなど、特定の犬種で多く見られます(Favrot et al., 2010)。
よく見られる場所: 顔、耳、足先、わきの下、内股
これらの部位は皮膚が薄く、バリア機能が弱いため症状が出やすいのです(Favrot et al., 2010)。
季節性がある場合も: 春だけ、秋だけかゆがる場合は、花粉などの環境アレルギーの可能性が高いです。
脂漏が増えて起こる皮膚炎で、マラセチアという酵母菌(カビの一種)が異常に増えることも原因の1つです(Bond et al., 2020)。
特徴的なサイン:
「最近、なんだか体臭が気になる…」という場合は、マラセチアが原因かもしれません(Bond et al., 2020)。
ヒゼンダニという小さなダニが皮膚に寄生して起こる病気です。非常に強いかゆみが特徴です(Mueller et al., 2020)。
よく見られる場所: 耳の縁、肘、かかと
注意!人にも感染する可能性があります。 愛犬に激しいかゆみがある場合は、早めに受診してください(Mueller et al., 2020)。
たった1匹のノミでも激しいかゆみを引き起こします(Dryden, 2024)。
ノミの唾液に対してアレルギー反応を起こす病気です。「最近ノミを見ていないから大丈夫」と思っていても、1匹見逃しているだけで症状が出ることがあります。
よく見られる場所: 腰から尻尾の付け根、後ろ足の内側
「室内飼いだから安心」は間違い! 人の衣服や靴について室内に入り込むこともあるため、定期的な予防が大切です(Dryden, 2024)。
特定の食べ物に含まれるタンパク質に対する反応です。犬では牛肉、乳製品、鶏肉、小麦などが原因になることが多いとされています(Mueller et al., 2016)。
大きな特徴: 一年中症状が続き、季節に関係ない
「春だけかゆがる」場合は環境アレルギー、「一年中かゆがる」場合は食物アレルギーの可能性を考えます。
「病院に行ったら何をされるんだろう?」と不安な飼主様もいらっしゃると思います。基本的な流れをご説明しますね。
獣医師が特に知りたいのは、以下のような情報です。
これらの情報が、診断の大きなヒントになります(Favrot et al., 2010)。特に「季節性があるかどうか」「一日中かゆがるか特定の時間帯だけか」「急激に痒みが増しているか、徐々に強くなっているか」といった情報は、アレルギーの種類を見分ける重要な手がかりです。
来院前のメモがおすすめ: 症状が始まった日、かゆがる場所、気づいたことをスマホにメモしておくと、診察がスムーズです。
かゆみの原因を特定するために、いくつかの検査を行います。どれも痛みはほとんどありません。
抜毛検査 テープで毛を採取して、ノミやノミの糞がないか、毛根部にニキビダニがいないか、カビの菌糸や胞子がみられないか顕微鏡で確認します(Dryden, 2024)。
原因がわかったら、それぞれに合った治療を行います。
軽度の場合は、**抗菌シャンプー(クロルヘキシジン含有など)での洗浄が第一選択です(Loeffler et al., 2025)。症状が改善したあとも、傷んだ皮膚が新しい皮膚に入れ替わるまでは治療を続けます。
感染が皮膚の深部におよぶ場合は、抗菌薬を3〜4週間使います。適切な期間の投与が重要で、症状が改善しても途中でやめずに指示通り続けることが大切です(Loeffler et al., 2025)。
膿皮症は多くの場合、アレルギーなどの基礎疾患に続発して起こるため、そちらの治療も並行して行います。
かゆみの強さや炎症の程度によって、以下のようなお薬を使います(Olivry et al., 2015)。
アトピー性皮膚炎は完治が難しい慢性疾患ですが、適切な治療とスキンケアを続けることで、わんちゃんの生活の質を大きく改善できます(Olivry et al., 2015)。
保湿剤の使用や、皮膚のバリア機能を強化するシャンプーも、治療の補助として有効です。国際的な治療ガイドラインでも、これらのスキンケアが推奨されています(Olivry et al., 2015)。
軽度なら抗真菌シャンプー(ミコナゾールやクロルヘキシジン含有)で対応できます。重度の場合は内服薬を使います(Bond et al., 2020)。
マラセチアも細菌と同様、基礎疾患に続発することが多いため、根本的な原因への対処が再発防止には不可欠です(Bond et al., 2020)。週に2回程度のシャンプーが推奨されています。
ダニを駆除するお薬を使います。かゆみや炎症が強い場合は、短期間、症状を抑えるお薬も併用します(Mueller et al., 2020)。
飼育環境の清掃も重要です。寝具やタオルは高温で洗濯し、掃除機をこまめにかけましょう。ヒゼンダニは環境中では長く生きられませんが、徹底した清掃が再感染予防に役立ちます(Mueller et al., 2020)。
ノミ駆除剤の投与が基本です。お家にいるすべてのどうぶつに投与する必要があります(Dryden, 2024)。
かゆみが強い場合は、一時的にステロイド剤やかゆみ止めのお薬を使うこともあります(Olivry et al., 2015)。
環境中のノミ駆除も重要です。寝具やカーペットの掃除機がけをこまめに行いましょう。
診断と治療を兼ねて除外食試験を行います。原因となる食材が判明したら、それを含まない食事を生涯続けます(Mueller et al., 2016)。
手作り食の場合も、獣医師と相談しながら原因食材を避けたレシピを作ることが大切です。
以下のような症状が見られたら、できるだけ早く動物病院を受診してください。
かゆみは、どうぶつにとって大きなストレスです。 放っておくと、二次感染を起こしたり、慢性化して治りにくくなったりします。
「これくらいで病院に行っていいのかな?」と迷ったら、迷わず受診してください。 早めの受診が、愛犬の苦痛を最小限にし、治療期間も短くします。
犬のかゆみには、ノミアレルギー、アトピー、食物アレルギー、疥癬、細菌感染、マラセチアなど、様々な原因があります。
原因によって治療法がまったく違うため、自己判断での対処は危険です。
「インターネットで調べたシャンプーを試してみよう」という判断が、症状を悪化させることもあります。かゆみの原因を正確に診断し、適切な治療を行うことで、わんちゃんの快適な毎日を取り戻すことができます。
かゆみが出たら、まず動物病院で正確な診断を受けることが、最善の選択です。
当院では、丁寧な問診と各種検査によって、かゆみの原因を正確に特定し、どうぶつさんに最適な治療プランをご提案しています。
「こんなことで相談していいのかな?」と思わず、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
LINEで簡単予約ができます 待ち時間を減らして、スムーズに診察を受けていただけます。
記事監修:行徳どうぶつ病院院長 名古孟大