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犬の乳腺腫瘍について

2025.01.31


犬のおなかにしこりのようなものがある場合、乳腺腫瘍かもしれません。犬の乳腺腫瘍は、避妊手術をしていない雌犬によく見られる腫瘍で、8歳~10歳前後に多く発生します。これは雌犬の全腫瘍の52%を占め、ヒトでの発生率の約3倍と言われています。
腫瘍とは、異常な細胞が無秩序に増殖する異常な細胞集団を指します。通常は身体の防御システムが働き、異常な細胞は大きくなる前に排除されますが、腫瘍の下では防御システムが効果的に働かず、異常な細胞の集団はどんどん大きくなっていきます。乳腺細胞が異常に増殖してしこりを作ったものを、乳腺腫瘍と呼びます。
犬の乳腺腫瘍の約50%が悪性、残りの50%が良性とされています。悪性腫瘍の場合は、肺や肝臓リンパ節などに転移する可能性があります。

1.症状
乳腺にしこりがみられます。犬は一度に何頭も仔犬を産むため、乳腺は左右に5対あります。犬の乳腺は前足の付け根から後ろ足の付け根まで広がるので、私たちの思う胸の位置ではなく、おなかにあるしこりも乳腺腫瘍の可能性があります。

2.原因
乳腺腫瘍のはっきりとした原因は不明ですが、女性ホルモンとの関連性がきわめて高いと考えられています。初回発情の前に避妊手術を受けた雌犬が乳腺腫瘍になる確率は約0.5%、初めての発情と2回目の発情までの間に避妊手術を受けた場合は約8.0%、2回目と3回目の発情の間に避妊手術を受けた場合は26.0%とされ、それ以降だと避妊手術のメリットはほぼないとされています。

3.触診・検査
獣医が触診し、皮膚病や虫刺されと診断する可能性もあります。
触診を行い乳腺腫瘍が疑われる場合は、細い針を刺して中の細胞を確認し、乳腺細胞由来のものかどうかを調べる細胞診を行います。細菌感染や炎症を伴っている場合や、乳腺の細胞以外の細胞が増殖してできたしこりの可能性もあります。細胞診では良性のものか悪性のものかは通常は判断できません。また、複数のしこりがあった場合にすべて同じものとは限りません。良性のものか悪性のものかを細胞診で調べる遺伝子検査もありますが、その検査で陰性でも悪性腫瘍と診断される可能性は5例に1例ほどあります。
左右の乳腺はリンパ節へ連絡しており、肺や全身に転移することがあります。乳腺腫瘍の進行度は大きさや転移の有無により1-5段階のステージに分かれます。転移を起こす悪性腫瘍かどうかは腫瘍のサイズの直径にはよりません。手術をできる体調なのかどうか、転移を起こしていないかどうかを確認します。

4.治療
治療の第一選択は外科手術です。犬は左右5対乳腺がありますが、第1から第3乳腺、第4から第5乳腺はリンパ管で続いています。また犬の場合、第3から第4乳頭の間にもリンパ管が連結していることが多いとされています。このため、たった1つのしこりでも連結している領域の乳腺全体、または片側すべての乳腺の摘出手術が必要になることもあります。高齢犬や麻酔のリスクが高い場合、腫瘍がある乳腺のみを切除したり、腫瘍のみを切除することもありますが、この場合再発の可能性は高くなります。手術後は摘出した腫瘤を病理組織検査に出し、良性か悪性か診断を行います。
また、併せて避妊手術を行う場合があります。その他補助療法として放射線療法や化学療法を併用することもあります。緩和療法としては、痛みを和らげたり、栄養補給、免疫を高めて、生活の質(QOL)を少しでも高く過ごせるようにサポートしていくことが可能です。

犬の乳腺腫瘍は、予防と早期発見が非常に大切です。繁殖の予定がないのであれば、なるべく早期に避妊手術を行いましょう。また、日ごろからスキンシップを兼ねて頭の先から尻尾の先までよく触り、小さな異常に気付けるようにしましょう。

浦安、行徳近辺で犬の乳腺腫瘍について詳しくお聞きになりたい場合は、お気軽に行徳どうぶつ病院グループまでお尋ねくださいませ。

行徳どうぶつ病院