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犬が異常に鳴く時はどうしたらいい?

2023.01.20

動物は言葉を話せませんが、一緒に暮らしていると、意思疎通が必要になります。なので動物は飼い主と積極的にコミュニケーションを取ろうとします。

例えばご飯が欲しい時は飼い主を追い回して吠えたり、遊んで欲しい時はおもちゃを咥えて持ってきたり、構って欲しい時には転がってお腹を見せたり。これらの一連の行動は、人に自分の気持ちを伝えるための行動です。

しかし、人と動物の間で最も成立しやすいコミュニケーションは声です。

人が名前を呼んでペットに話しかけるように、動物も声を出すことで飼い主にアピールをします。そのため吠え声、鳴き声が増えすぎて、飼い主を困らせることがあります。

無駄吠え、過剰咆哮ほうこうと呼ばれるこれらの問題行動は昔から治療の対象とされてきましたが、有効と言われた「体罰を与える」「手術で声帯を切る」といった処置も、最近では行動学的に正しくない、動物福祉的に良くないとして行われなくなってきています。

また、イヌ科の動物には序列があるため、家族の中で自分を優位に考えていると攻撃的になる(吠える)という意見もありますが、これも解釈が分かれており、明確な結論が出ていません。ペットとして長年飼われている犬は人社会に馴染み、野生で暮らすオオカミとは社会性が異なるという説もあるためです。

動物の問題行動は簡単に治療できないものばかりです。しかし冒頭で示した通り、犬がコミュニケーションの手段として鳴き声を発している場合もありますから、飼い主とペットが上手にコミュニケーションが取れるようになれば、状況が大きく改善することもあります。

今回は鳴き声による問題行動のよくある原因と簡単な対処法について解説していきます。

1.飼育環境
例えば来客があると犬が吠える理由には、主に好奇心か恐怖に二分されます。
好奇心で吠えている場合は、行動を消去するための訓練をすることで改善することがあります。
恐怖で吠えている場合は、犬が怖がらないように玄関のそばから離して生活させるなどの、飼育環境の変更が必要となります。
また、長い時間サークルやゲージに入れて飼育している場合は、犬のしつけの問題ではなく、狭い場所で行動を制限されるストレスによるものの可能性があります。誤食に困っている場合は拾い食いしそうなものを床に置かないようにしてサークルの外に出す、暇にならないようたくさん遊んであげるなど、環境の刺激(目で見たり、自分の足で歩いて移動したり、物を触ったり、匂いをかいだりする機会)を増やしてあげる必要があります。

2.要求による吠え
飼い主の気を引くために吠えている場合は、飼い主が吠えに反応して声をかけたり、要求を飲んだりすることで吠えが癖になってしまうパターンが多いです。改善のためには飼い主が完全無視を徹底する必要がありますが、犬は要求が通らないと不満が強くなり、一時的に吠えが悪化することがあります。
吠えが悪化した段階で飼い主が根負けしてしまうとさらなる悪化を招くため、無視が難しい場合は飼い主側が犬の視界から姿を消すようにするとよいでしょう。立ち去る時間は10秒から30秒ほどですが、吠えが始まったら必ず姿を見せないようにすることを繰り返します。

3.飼い主への執着が強い時
犬は愛玩動物として繁殖されてきたため、多くは飼い主に甘えやすい性格を代々受け継いできています。成犬になっても子供っぽさが残る(ネオトニー)があるために、飼い主への依存心が強くなると、飼い主が見当たらなくなった時にパニックを起こすことがあります。このパニックには噛みつきなどの攻撃行動やトイレの粗相、過剰咆哮が含まれますが、これらが日常生活に支障をきたしたり、近隣とのトラブルになりかねない場合は、分離不安症としての治療が必要となります。
また、虐待の経験やトラウマを持つ犬もパニック(恐怖症)を起こします。動物の精神論にPTSDはありませんが、それに近い状態であると考えられるため、薬による治療が必要になることもあります。

4.認知の不安定
人では認知症と呼ばれるもので、主に高齢動物に認められます(ただし人のアルツハイマー病とは性質が異なります)。
症状としては飼い主を無視する・威嚇する、ぐるぐる回る・うろうろと徘徊する、壁に頭を当ててじっとする、意味のない吠えをする、トイレの失敗などがありますが、全ての症状が現れるわけではありません。
基本的にこれらの認知機能不全はトレーニングでの改善が難しいため、薬での治療がメインとなります。
若い犬でこれらの症状が起こる場合は、生まれつきの脳疾患、もしくは脳の病気(脳腫瘍など)が疑われるため、早めに病院の診察を受け治療を始めましょう。

まとめ
飼い主が思ったことと犬の行動の意味が食い違うことで互いにストレスがたまり、うまくコミュニケーションを取れないことが続くと、やがて問題行動につながっていきます。しかし人側が犬の気持ちを完璧に理解することはできませんし、犬が人の意図を完全に理解することはできません。問題行動の改善にかかる時間は、犬の性格、また飼い主が犬とどれだけ向き合えているかによって変わっていきます。

浦安、行徳近辺で犬の無駄吠えについて詳しくお聞きになりたい場合は、お気軽に行徳どうぶつ病院グループまでお尋ねくださいませ。

行徳どうぶつ病院
獣医師
大山 美雪